冬キャンと曇り空、ときどき流れ星

12月の天文現象といえば、中旬に極大を迎えるふたご座流星群だ。見たい。しかし東京では空が明るすぎる。空が暗いところで見たい。

車があれば荷物を載せて好きなところに移動できる(し、車中泊だってできる)が、一人ではコスパが悪い。公共交通機関で移動し、キャンプして星を見よう。

どこに行くか。この時期、内陸部(山梨や長野)は寒そうだ。筆者が冬にキャンプをするのは初めてなので、あまり寒いのは避けたい。太平洋に面した海沿いならまだ暖かいだろうか。東京からほど近くて海沿いで空が暗そう、となると伊豆か房総か。

房総は公共交通機関でのアクセスに便利そうなキャンプ場があまり見つからなかった。一方、伊豆は初めての冬キャンプにはちょっと遠いような気がした。

では、箱根はどうか。調べてみると、湖のそばに良さそうなキャンプ場があるようだ:芦ノ湖キャンプ村

芦ノ湖キャンプ村は、オフシーズンの平日はテントサイト1泊1000円とリーズナブルで、また、この時期は利用客が少ないので予約なしでも大丈夫そうだ。

星を見ることに関しては、小田原や沼津の市街地にやや近い(光害があるかも)ことが不安要素だが、そこそこの星空は期待できるだろう。

荷物

荷物は多い。一眼レフを2台持っていくため、登山にいく時よりも多い。ただ、山道を歩くわけではないため、全て背負う必要はないというのは救いである。今回は以下の荷物を登山用バッグ、車輪付きのバッグ(スーツケースに近いけどケースという感じではない)、それから三脚1台を専用のバッグに入れて持ち運んだ:

キャンプ道具:テント、シュラフ、銀マット、エアマット、ツェルト(シュラフカバー代わり)、炊事用具(コンロ、ガスカートリッジ、コッヘル、箸、スプーンなど)など。

カメラ周り:一眼レフ2台、三脚2台、ポータブル赤道儀1台(ポラリエ+極軸望遠鏡)、レンズいくつか、フィルター、リモートスイッチ、カイロなど。

食料:夜食を複数回作れるように準備しておく。インスタントラーメン、カップ麺、おでん、餅、お湯で作れる飲み物など。

衣類:防寒用、温泉用。

寒さ対策

シュラフは-5℃まで大丈夫(?)なダウンのやつだが、何年も使ってるから性能的にどうなっているかは知らない。

マットは、銀マットとエアマットを用意した。

シュラフで寝るときに寒いと困るが、シュラフカバーを買うとまたお金がかかる。手持ちのツェルトをカバー代わりに使うことにしよう。

あとはひたすら(ヒートテックなどを)着込む。それからカイロを使う。

そして、食べる。ネズミみたいに定期的に食べる。

当日

「箱根フリーパス」を購入。キャンプ場に行って帰るだけならフリーパスを買わずに小田急線とバスに乗るだけの方が安いのだが、どうせだからロープウェイやケーブルカーも乗りたいし、その場合はフリーパスの方が安い。

電車ででかい荷物を持っていると目立つ。テント泊登山の荷物に加えてもう一つでかい荷物を持っている。電車内でおばさんに「どこ行くの?」と聞かれたが、冬にキャンプするなんて言って怪訝に思われたらどうしようとか考えてしまい、曖昧に笑ってごまかした。

小田急線の途中駅から小田原方面に向かうわけだが、時間が悪かったようで藤沢行きの快速急行→新松田行きの急行→小田原行きの各駅停車、というパターンを踏んでしまった。「急行 新松田行き」とか言ってないで小田原まで行ってくれ…と思うが。

途中の開成駅ではホームの工事をやっていた。都心では代々木八幡駅が10両編成に対応するためのホームの延伸工事(踏切の移設やら橋上駅舎化やらを伴う大掛かりな工事)をやっているが、小田原付近も各駅停車を10両化するのか…?しかし他の駅はその様子はない。あとで調べたら、急行列車が開成駅に停まるようになるらしい。

小田急線・箱根登山鉄道の小田原駅

桃源台行きのバスは小田原駅からも出ているので小田原駅からバスに乗ってもいいのだが、どうせだから箱根登山鉄道で箱根湯本駅まで行ってみた。桃源台行きのバスは箱根湯本始発のものもある。もう少し先の駅からバスに乗ることもできたが、始発のバスに乗る方が確実に座れるので良い。

箱根湯本駅

箱根湯本バス停

路線バスはカーブが多くて揺れる。谷間に登山鉄道の軌道が見えた。山岳鉄道は萌えだ。萌え。

バスは箱根の奥の方、仙石原を通る。すすきの原っぱがある。この辺をゆっくり散策しつつ観光するのも楽しそうだ。

周囲は山に囲まれており、箱根のカルデラ感を感じる。

坂をぐいぐい登り、いくつかのホテルの最寄りバス停を経て、バスは終点・桃源台に到着する。湖が目の前である。桃源台はロープウェイ駅とバスターミナル、観光船の乗り場が集まった交通の拠点となっている。

桃源台

そんなターミナル駅を後にして、落ち葉に覆われた歩道を通り、キャンプ村へ向かう。もう少し時期が早ければ綺麗に紅葉していただろう。

キャンプ村へは16時過ぎに到着した。受付を済ませる。今日のキャンプ客は自分だけらしい。オフシーズンの平日だから当然か。一番広いキャンプサイトを割り当てられた。

「風邪をひかないように」とのことだったが、寒いのは覚悟の上だ。こちらは「凍死しないように」のつもりである。他の注意点としては、イノシシが出るかもしれないのでテント外に食べ物を放置しないこと、だそうだ。

芦ノ湖キャンプ村(翌朝撮影)

キャンプサイトに着いたところ、空から白いものが降ってきた。固体だ。これはいわゆる雹か霰というやつではないか。液体が降ってくるよりはマシなのかもしれないが、そもそも今日は晴れの予報だったはずだ。下界の天気予報は当てにならないということか、それとも晴れの予報でも一時的に降水があるかもしれないということか。

キャンプサイト

屋根付きの炊事場に荷物を仮置きして、テントの設営を開始する。だだっ広いキャンプサイトに一人用のこじんまりしたテント。ペグが地面の奥まで刺さらないが、まあいいだろう。

ただでさえ狭い一人用テントに、大きな荷物を入れるとさらに狭くなる。物の管理が大変だ。横になれるスペースを確保する。

マイテント

テントの設営が終わったので、夜にならないうちにキャンプ場を見て回る。

まず、近くに水門がある。ここから早川(箱根湯本の駅の近くを流れている川)が流れ出しているらしい。

水門(翌朝撮影)

テントサイトの近くにあるバーベキュー場やキャンプファイヤー場は空が広く、写真を撮るのに適していそうだ。湖も見える。

バーベキュー場(翌朝撮影)

トイレは広くて綺麗だ。

キャンプ場には灯りが点在しているが、場所を選べば写真を撮る際の邪魔にはそれほどならないだろう。

一通り見たところで、テントに戻る。昼ごはんをちゃんと食べていなかったので食事にしよう。まずはパンとコーンポタージュだ。

1食目、コーンポタージュ

晴れていないし、夜になるまでやることもないし、睡眠不足なので、しばらく寝る。19時半くらいまで寝る。

夜中

起きてみたが、相変わらず曇っている。時折雲間に星が見えるが、じっくりと写真を撮れるほどではない。

2食目にしよう。インスタントラーメンに具として餅を入れる。うまい。

2食目、餅入りインスタントラーメン

しかし、暇である。荷物が増えるが、積んでいるアニメをタブレットにダウンロードして持ってくるべきだったろうか。持ってこなかったものは仕方がないので、スマホでツイッターでも眺める。

日付が変わる前はずっとこの調子で曇っているかもしれない。日付が変わるまで寝よう。

…日付が変わった頃起きてみたが、やっぱり曇っている。

3食目(食事ではないが)、ココア。

3食目、ココア

あったかい。

しかし寒い。気温は何度だろう。シュラフの上にツェルトをかぶせることにする。少し暖かくなった。

やっぱり暇である。つまめるお菓子(柿ピー)は2袋しか持ってこなかった。ツイッターばかりしていても手持ち無沙汰だ。

このまま晴れずに、一眼レフと三脚をそのまま持ち帰ることになったら萎える。せめて、深夜のキャンプ場の写真でも撮って今後の参考にしなければならない。

夜のキャンプ場、テントサイトからバーベキュー場方面

バーベキュー場と多目的ホール

夜のバーベキュー場と芦ノ湖

テントと炊事場

一通り写真を撮った後、4食目。おでん+お餅。

温めるだけのおでん

4食目、餅入りおでん

スーパーで売っていた、温めるだけのおでんである。追加の具材として、お餅を投入した。

先にお湯を沸かしてお餅を茹でたのだが、おでんの汁と合わさって汁が多めになってしまった。汁は少し残すことにする。

さて、午前4時を過ぎて、ようやく晴れ間が広がってきた。待った甲斐があった。慌ただしく、三脚や赤道儀、カメラの準備をする。

午前4時の星空

すでにふたご座は天頂を過ぎ、西の空に向かっている。北斗七星は天高く昇り、東の空には春の大曲線が見える。

三脚を立て、ポラリエをセットする。追尾で数十分間の連続撮影をしたいので、極軸望遠鏡を使って正確に極軸を合わせる。一眼レフのうち一台(Kiss X5)をポラリエに乗せ、撮影を開始する。

撮影範囲としては、超広角レンズでふたご座と天頂、北の方を入れるようにした。

こうなればこっちは放置するだけだ。もう一台のカメラをセットアップする。

1台目のカメラは空の高いところを追尾で撮影したので、もう1台のカメラは地上の風景を入れて固定で撮影する。湖に面したロケーションなので当然湖を入れる。対岸の明かりが良いアクセントとなるだろう。

湖はキャンプ場の南にあるので、当然撮影範囲は南の空になる。ちょうどからす座とスピカがいる。こちらも連続撮影する。

こうして2台のカメラで撮影を開始したわけだ。あとは肉眼で空を眺めて流星を待つだけである。

晴れた空の下は寒い。流星はなかなか流れてくれない。しまいには雲が流れてきて空を覆い隠したが、それは一時的なもので、待っていたらまた晴れてくれた。

そうして空を眺めていると、時たま、光の線が走る。手間暇かけてふたご座流星群を見にきた甲斐があっただろうか。思ったほど感慨は湧いてこない。

追尾で撮影した写真のうち流星が写っていた6枚を比較明合成したもの

湖と南の空と金星

その辺のベンチに寝っ転がってみる。そのまま寝転ぶとベンチについた霜が付着してしまうので、テントから引っ張り出した銀マットを敷き、その上に寝転がる。その上にツェルトを被り、寒さを和らげる。

こうやって横たわって星空を堪能したのはいつ以来だろうか。7月に行った日光白根山の時はあまり晴れなかった。去年行った八ヶ岳も晴れなかった。登山じゃなくて単に星を見に行ったのはいつだったか……。ともかく、久しぶりに味わった、懐かしい感覚であった。

5時を過ぎた頃、炊事場の灯りがついた。追尾撮影している方は炊事場の灯りが映り込んでしまう。一旦撮影を止めて、別のアングルに向ける。空はまだ暗く、もう少し撮影を続けられそうだ。

一方、南東の空には明けの明星、金星が昇ってきていた。眩い。金星は大抵マイナス4等くらいあって、月を除けば夜空で一番明るい星だ。

次第に空が明るくなってくる。薄明が始まっている。カメラの撤収に向かう。流星が写ったか気になるが、確認するのは家に帰ってからにしよう。

他の星が消えても、金星はまだ残っている。金星が見えなくなるまで、あるいは日の出まで空を眺めていたい気がするが、そのためには寒い中さらに数十分待つ必要があるだろう。日の出は諦めて、テントに戻ることにした。

夜明けの空の金星

寝る前に、おでんの残り汁でお餅を茹でて5食目。なんだか貧相な気がするが、まあいいか…。お餅を食べて寝る。

5食目、おもち

箱根観光

ここのキャンプ村は10時チェックアウトなので、9時過ぎに起きて撤収を開始した。残念ながら朝ごはんを食べる時間はなさそうだが、ここは観光地だからその辺に食事処があるに違いない。

特に借りた物品はないのでチェックアウトの手続きは不要だが、受付に「近くの日帰り温泉」リストがあったので読ませてもらった。徒歩数分のところのホテルが1200円とか1300円で日帰り入浴をやっているらしい。もう少し遠くに行けばもっと安いところもある。ついでにキャンプ村の売店を見ていたら、昨夜食べたのと同じおでんが500円で売られていた。

とりあえず桃源台駅に向かう。この手の施設には大抵コインロッカーがあるはずなので、そこに大きい荷物を置いて、身軽な体でロープウェイや温泉に行きたい。

桃源台

登山用のザックはコインロッカーに入りそうな感じではなかったが、もう一方の(転がす方の)荷物を詰め込むことはできた。

まずは腹ごしらえをする。桃源台駅に湖を眺められるレストランがあったが、いかにも観光地価格という感じだった。まあいい。カツカレーを頂き、ロープウェイに乗りに行こう。

眺めの良いレストラン

箱根にはロープウェイやらケーブルカーやらがあるが、残念ながらケーブルカーは運休でバス代行とのことだった。というわけで山の反対側(早雲山駅や強羅駅)までは行かずに、最高地点の大涌谷おおわくだにまで行って戻ってくることにする。

土曜日の午前中なので、桃源台から大涌谷方面は空いていた。途中姥子うばこ駅を経由し、大涌谷駅へ。後ろを振り返ると湖やゴルフ場が見えた。

ロープウェイ

ロープウェイから、芦ノ湖

ロープウェイから、ゴルフ場

ここのロープウェイには小田急線から連なる駅ナンバリング「OH」がつけられている。新宿駅から小田原駅、箱根湯本駅、強羅駅などを経由して、桃源台駅が終点である。乗り物は違うが、一続きに繋がっていることを感じさせる。

「OH」の駅ナンバリング

大涌谷までは自動車で来られるようで、駐車場に入ろうとする車が列を作っていた。自動車は乗り換えなしで大抵のところに行けるのがメリットだが、観光地では駐車場に翻弄されるのがデメリットである。箱根は公共交通が充実しているので公共交通で巡るのが良いのかな、と思う。

ロープウェイから、大涌谷方面

大涌谷は、あちこちから煙を上げていて、まさに地球の息吹を感じさせるところだった。「大涌谷」などという穏便な地名ではなく「地獄」という地名が付いていてもおかしくない、むしろなぜ(立山のような)「地獄」ではないのだろうと訝しんだが、どうやら昔明治天皇が巡幸に来た際にそれまでの「大地獄」だか「地獄谷」だかから改名されたらしい。

大涌谷

大涌谷

大涌谷

谷を見下ろせるスポットには観光客がたくさんいて写真を撮っていた。自分も紛れて撮るが、自分が写った写真も欲しい。その辺の観光客を捕まえて撮ってもらうか…と考えていたところ、外国人観光客に写真撮影を頼まれたので、お返しに自分も撮ってもらった。

大涌谷駅

大涌谷の名物は黒たまごのようで、「大涌谷」と書かれた丸いオブジェの前で観光客が写真を撮っていた。

黒たまごのオブジェ

眺めて帰るだけでは物足りないので、箱根ジオミュージアムに立ち寄った。ちょっと前に箱根の火山活動が活発化してあちこちが今も立ち入り禁止になっているが、噴火したのが2015年ということで、3年も経っていて驚いた。

箱根ジオミュージアムの出口付近に、学芸員が撮った星の写真が展示されており、その中にはふたご座流星群の写真もあった。気軽にこういう写真を撮れるところにいるのは羨ましい。

火山ガス注意

そんなこんなで大涌谷を後にする。ロープウェイで桃源台駅に戻った時、反対側(大涌谷、強羅方面)には乗車待ちの長蛇の列ができていた。桃源台が基点で良かった。

ロープウェイから、桃源台駅

ロープウェイ乗車待ちの列

なぜかモノレールの宣伝が

桃源台

あとは近くの公園(広場)を散策して、温泉に入って帰るだけだ。なかなか楽しいキャンプだった。

白百合台園地

つどいの原っぱ

夕暮れの桃源台

雑感

流星観望に関して

結局、空が晴れて流星が見られたのは最後の1〜2時間だけで、それも時々雲が流れる感じだった。

確実に晴れた空で見たいのであれば、一箇所に決めず車で随時移動するのが良いのだろう。

あるいは、テント泊でも同じ場所に2泊以上すれば、1泊あたりの移動や設営の手間が省ける。また日中に大きな荷物をテントに置いたまま観光(または食料の買い出し)に出られる。

写真撮影に関して

欲張ってISO感度を高くしすぎた感がある。より良い設定を考えたい。

星を撮る時に魚眼レンズや、どこぞのTHETAみたいな全天球カメラがあると面白いのだろうか。今回は買わなかったが、そのうち手に入れたい。

キャンプに関して

冬のキャンプは初めてだったが、色々準備をしたおかげでなんとか乗り切れた。食料や衣服にも若干余裕があった。

曇って星が見えない時のためにタブレットを持ってきてアニメの消化に充てるべきだった。

観光に関して

箱根は色々あるし2泊ぐらいしても良かった。また来たい。


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