月別アーカイブ: 2018年6月

TeX言語のトークンと値 その2:\noexpandと、挿入された\relax

我々はTeX言語を完全に理解しなければならない

我々はTeX言語を完全に理解するであろう

— David Hilbert

TeX言語をわからないまま書くのと、TeX言語を完全に理解した上で忘れるのは違いますからねぇ

— とある脚本家

前回はTeX言語について概略を説明したので、今回は堂々と(The TeXbookやTeX by Topicにも載らないような)重箱の隅をつつくことにする。記法、用語は基本的に前回に準じるが、面倒なので制御綴 \foo を表す際に四角で囲っていなかったり、文字トークンのカテゴリーコードを省略している場合がある。

一部、以前の TeXっぽいものを実装するにあたっての雑記 と内容が被っている。 続きを読む

TeX Live 2018でWindows上のTeXworksが日本語を含むファイル名を扱えない話

タイトルの件である。(実際にはTeXworksは問題の核心に1ミリも関係しないので、TeXworksを使っていないあなたもこの記事を読み物として楽しむことができる。さあ読もう)

この記事を書いている6月現在、TeX Live Managerで最新版にアップデートすれば問題は解決するはずである。

この記事では、筆者がどのようにこの問題の原因を突き止めたか、順に書き連ねていく。なお、問題の発覚と原因究明は5月初めに行ったが、TeX Liveのアップデートで対策されるようになるのを待った結果記事の公開が6月になった(筆者がよくブログ記事を下書きのままほったらかしているのとは関係ない)続きを読む

GLMのマニュアルがヘボいので自分で書き始めた

GLM — OpenGL Mathematics というC++のライブラリーがある。これはOpenGLとかで使うようなベクトルや行列の型・関数を提供してくれる。

それはいいのだが、これ、ドキュメントがヘボい。

まず公式の Manual は、ライブラリーの使い方を説明してくれるが、個々のAPIには立ち入らない。

次にDoxygenで生成された API Documentation は、個々の関数の説明をしてくれるが、(ベクトルとか行列の)型の説明が欠けている。そして、「ソースコードに飛ぶ」をやっても関数の実装は見れない(.hppはDoxygenの対象に入っているが.inlは入っていない)。関数がどういう数式を基に実装しているのか、GLMのドキュメントからはわからないのである。

まあGLMはGLSL互換を謳っているので、GLSLを知っていれば(GLSLのドキュメントを読めば)細かい説明はなくても使えるだろうという考えもあるかもしれない。それはまあそうかもしれないが、GLSLにないGLMの拡張機能に関してはそういうわけにはいかない。

たとえば、四元数に関連した mat4_cast 関数のドキュメントには

GLM_FUNC_DECL mat<4, 4, T, Q> glm::mat4_cast ( tquat< T, Q > const & x )

Converts a quaternion to a 4 * 4 matrix.

Template Parameters
T Floating-point scalar types.
See also
GLM_GTC_quaternion

とあるが、果たしてこの説明から関数の動作を予想できる人がどれだけいるだろうか?

したがって、(コピペコーディングではなく)GLMをまともに使おうとしたらGitHubのソースコードをチマチマ眺める必要があるわけだが、そんなのは辛すぎる。というか、LaTeXでもMathJaxでもいいから、数式をふんだんに使ったGLMのマニュアルが欲しい…。

というわけで、自分で書いてみることにした。

https://miz-ar.info/glm-notes/

現段階ではまだ、クォータニオン(四元数)についてちょろっと書いた程度である。筆者の必要に応じて、徐々に拡充していきたい。

なんとなく英語で書いてみているが、文法とか色々怪しいのでその辺はご容赦願いたい。

glm-notes/ 以下のURLは今後変わるかもしれないので、リンクを貼るならトップページ(https://miz-ar.info/glm-notes/)にお願いしたい。

なお、C++の関数の型は(伝統的には)戻り値の型を先に書くが、自分の書いたドキュメントでは(筆者にとっての読みやすさのため)戻り値の型は後置とする。また、引数の型の const& も省く。

おまけ

GLMとは全く関係ないが、筆者のほしい物リストほしい本リストを公開しておく。今月は筆者の誕生月である。

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OpenGL の投影行列