記事を書くときに気をつけていること、読んでもらうための工夫について

少し前(4月)に、「防御力の高い技術ブログを書こう」という記事が話題になった。

防御力の高い技術ブログを書こう – じゃあ、おうちで学べる

便乗というにはいささか時間が経ってしまったが、私も記事を書くときに気をつけていることを書いてみようと思う。

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自動車を買った/車は移動を自由にするか

人生をやっていると、大きな出費の瞬間が何回か訪れる。自動車の購入はその一つだ。

私が今住んでいる場所は都会というほどではないが大きな駅の徒歩圏内で、正直言って大人二人で生活する分には自動車はそんなに必要ない。自動車が必要ならカーシェアやレンタカーを使えば良い。だから自動車はこれまで持っていなかった。

しかし、色々あって今回自動車を購入することにした。

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GHCデバッグ日誌 CI編

私はHaskell処理系であるGHCに趣味で貢献しています。詳しいことは過去の記事を見てください:

今回は、GHCのCIの問題を追求した話をします。前に「GHCデバッグ日誌」という記事を書いたので、今回は「CI編」としました。

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Intel SDMの誤植を直してもらった

Intelはコンピューターの頭脳、CPUを作っている会社です。CPUで動作するプログラムを書くためには、プログラムを低レベルな命令の列に変換し、その命令の列を特定の規則に従って変換したバイナリー(機械語)を用意しなければなりません。IntelのCPUが提供する命令や機械語について、Intelが用意しているマニュアルがIntel 64 and IA-32 Architectures Software Developer’s Manual、略してIntel SDMです。

Intel SDMの最新版は「Intel® 64 and IA-32 Architectures Software Developer Manuals」から入手できます。全部合わせて5000ページ以上あります。

Intel SDMも人間が書いているマニュアルなので、時々誤植等があります。容易にそれとわかる誤植なら可愛いものですが、時にはわかりにくいものもあります。

December 2024の版における、CVTSS2SI命令の説明を見てみましょう。これは単精度浮動小数点数(Scalar Single-precision)を符号付き整数(Signed Integer)に変換する命令です。

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GHCのSIMDサポートの進捗:整数ベクトルの演算

ブログ等にちょいちょい書いていますが、私はこの数ヶ月ほどGHCのSIMDサポートの改善を進めています。

この3ヶ月間はx86 NCGで整数のSIMD演算を使えるようにするパッチを書いており、数日前にマージされました。一つのマイルストーンだと思うので記事にしておきます。

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数学とプログラムはどちらが易しいか/数学とプログラムの違い

最近、某所で「数学とプログラムはどちらが易しいか」という話題が出ました。その場ではあまり上手い返しができなかったので、ブログ記事の題材にして供養します。

もちろん、この質問の答えは人によって違うでしょうし、人によって違うからこそ質問として意味があると言えるでしょう。この記事に書くのは私の見方、私の意見です。

短い答えが欲しい人向けに2択で答えておくと「私にとってはプログラムの方が易しい」となりますが、以下に長い答えを書きます。

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TypeScript使いの憂鬱:never型はプロパティを持つか

never型とプロパティアクセス

TypeScriptにはneverという型があります。先日も記事にしましたが、簡単に言うとこれは「値を持たない型」です。

never型は、あらゆる型に対してその部分型として振る舞います。例えば、nevernumber の部分型であることは次のコードでわかります:

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never型があると便利か(言語処理系実装者の観点から)

TypeScriptをはじめとするいくつかのプログラミング言語には、never型という型がある。この型は典型的には「制御を返さない関数」の返り値として使われる:

function f(x: string): never {
    console.error(x);
    throw new Error();
}

never型は型システム的には「値を持たない型」「任意の型の部分型」として特徴づけられる。

他のプログラミング言語、例えば私が作っているLunarMLにもnever型があると便利だろうか?

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