技術書典5に初サークル参加した記録/前日まで

前回の記事で告知したように、10月8日に池袋サンシャインシティーで開かれた技術系同人誌即売会「技術書典5」に、「だめぽラボ」としてサークル参加した。

この記事ではその経過と判断を、日記に近い形でまとめておく。この記事には前日までの分を書き、当日の実際の売れ行きは別の記事に書く。また、冊子の内容や技術的な話(PandocやLaTeXの話)もこの記事には書かず、別の記事に書く。

被チェック数

当初の想定は、(最終的な)被チェック数30くらい、頒布数50〜60くらいだった。

なお、サークルカットは早々に提出しておいたので、どの段階でサークルリストを見ても「数学をプログラムしよう」的な謳い文句が目に入ったはずである。

  • 9月12日(サークルリスト公開の2日後):1桁前半
  • 9月19日:20
  • 9月26日:25
    • この日は入稿締め切り日で、この段階で印刷部数を確定させる必要があった
  • 10月1日(1週間前):33
  • 10月4日(4日前):45
  • 10月5日(3日前):50
  • 10月6日(2日前):60
  • 10月7日(1日前):73〜82
  • 当日(10月8日)朝:83
  • 最終値:106

「当初の想定は、被チェック数30くらい」、だったのだが……どうしてこうなった。技術書典ェ…。

頒布物と印刷部数

今回の頒布物「代数的数を作る 多項式の根と因数分解のアルゴリズム」は、結局本文268ページとなった。

表紙を作る段階であまり時間がなかったので、短時間(悩む時間も含めて半日)で作れて、ある程度カラフルで、個人的に納得がいくデザインを考えた結果アレになった。背景が真っ白で寂しい気がするが、まあ仕方ない。

印刷所と締め切り

印刷所のチョイスであるが、筆者は同人誌即売会への初めてのサークル参加で、搬入の手続きには不慣れである。なので、即売会と提携(?)して会場に直接搬入してくれる印刷所(バックアップ印刷所)がありがたい。技術書典のバックアップ印刷所は「日光企画」か「ねこのしっぽ」なので、この2つから選ぶ。といっても前者は200ページを超える同人誌のオンデマンド印刷は受け付けていないようなので、必然的に後者となった。

その場合、入稿締め切りは9月26日の15時となる。ページ数が多いと入稿締め切りが通常より早まってしまうので要注意である。早割なんてなかったんや…。

入稿はオンラインで行うので、アップロードの期限である15時ギリギリまで原稿の修正ができるはず。…と思われたが、実際に数分前まで作業をしていた結果、AcrobatによるPDF/X-1化が間に合わず(10分以上かかると思っていなかった)、LuaTeXが吐き出したPDFをそのまま入稿することになってしまった。まあフォントの埋め込みはされているのだが…。

印刷部数

さて、入稿(注文)の段階で、何部刷るかを決定しなければならない。これは大問題である。部数が少なければ早々に売り切れる危険性があるし、部数が多過ぎれば大量の在庫を抱えることになってよくない。ページ数が多いと後者は特に深刻で、268ページもあると

  • 本がかさばって良くない
  • 印刷費が高くついて、当日の売り上げだけでは回収できない可能性がある

というリスクがある。

一方、Twitterに流れてきた記事 技術書典で爆死しないために|erukiti|note には

20冊くらいは手元に残しておきましょう。同人誌は名刺代わりに使えます。

とあったので、売り切れにはこだわらず、若干は手元に残しても良いと考えた。残った部数によっては委託という手もあるだろう。

ということで、印刷する部数は捌ける部数の想定よりも多めにする(売り切れの可能性を減らしてより多くの人に届けるため&手元に残すため)。

入稿締め切り日の9月26日の段階では被チェック数は25だった。最終的に被チェック数が30程度になれば良いと思っていたので、まあこんなものだろう。捌ける部数の想定は被チェック数(の想定)から若干増やして50〜60部と考える。そうすると、20部程度残ってもいい計算で、印刷するのは80部か100部が適当だろう。

80部か100部か。当時は悩みに悩みまくったが、売り子氏の「100部にしましょう」という声に圧されて100部で注文した。注文後に「やっぱり多すぎたかなあ……」と後悔したが、もう遅い。ちなみに80部の次が100部で、中間の選択肢はない。

印刷した100部が実際にどのくらい捌けたかについては、次回の記事(当日編)を待ってほしい。

電子版・紙書籍版と、価格設定

価格設定も大問題である。安すぎると赤字になるし高すぎると売れない。

過去の技術書典を見てきた感じでは、技術同人誌の値段は500円か1000円が多いようだった。なるべく500円単位にしようという圧力が感じられる。

しかし、200ページ超の同人誌となると印刷代だけで1部1000円前後になってしまう。そうすると必然的に値段を1000円よりも高くせざるを得ない。

うちは金なし学生サークルなので、心血を注いで作った同人誌が売れなくて赤字、という事態は絶対に避けたい。売れる想定の50部前後で印刷費(10万円程度)がペイする、となると2000円か2500円に設定するのが妥当だろう(値段は500円単位で考える)。ただ、サークル参加費も考えると2000円×50では少々心もとない。

かと言って、2500円では印象として高すぎる。高いと、せっかく興味を持ってもらった人も買ってくれなくなる。

妥協案として、紙書籍版単体と電子書籍とのセットを分けて、前者を2000円、後者を2500円とした。ラインナップとしてはさらにもう一つ、電子版単体も販売し、紙単体の半額の1000円とする。つまり

  • 電子版:1000円
  • 紙書籍版:2000円
  • 電子+紙書籍セット:2500円

とした。電子版単体を安く売ると、本を買ってくれるという人がそっちに流れてしまい、分厚い紙書籍を売りさばいて在庫を減らすという目論見から外れる恐れがある。しかし、わざわざ技術書典に来る人は物理的な書籍が目当てだろうから、その心配はあまりしなくて良いと考えた。

ただ、このラインナップには問題点があって、内容は同じなのに2000円のやつ(紙書籍版)が1000円のやつ(電子版)の上位互換にならない。電子書籍版も欲しいけど2500円はちょっと高い、という人に対応できない。

ラインナップについては最後まで悩んだが、結局上記の案で行くことにした。

電子版のダウンロードカード

同人誌即売会で電子的なものを販売する際は、URLとシリアルコード(または共通のパスワード)を印刷した紙(ダウンロードカード)を会場で渡し、後で購入者がそのURLからダウンロードする、という形式が一般的である(たぶん)。うちのサークルもその形式に倣うことにした。

そのためのURLとシリアルコードを用意してくれるサービスはいくつかあるようだが(ググった感じでは、プラスチック製(?)の立派なダウンロードカードを用意してくれるものもあるようだ)、電子書籍に関しては「対面電書」というサービスがある。

しかし筆者は 気の迷いで 敢えて、ダウンロードカードのみならず、ダウンロード用のURLとシリアルコードも自作してみることにした。

ダウンロードカードのデータ(PDF)に関しては、使い慣れたLaTeXで、TikZを使ってちょいちょいとデザインした。カードは名刺サイズ(後から考えると、クレジットカード等のサイズの方が良かったかもしれない)とし、A4 1枚から10枚切り出せるように配置した。

カードごとにシリアルコードの埋め込みに関しては、LuaTeXの機能で、文書中に埋め込んだLuaコードから外部ファイルを読み込むようにした(LuaTeXを使わなくても、LaTeXソースを生成する形で十分だし罠も少ないが)。この辺の話に関してはそのうち詳しい記事を書きたい。

【12月17日 追記】→書いた: LuaLaTeXでダウンロードカードを作った話

ダウンロードカードの印刷は、コピー紙じゃないもうちょっと厚い紙に印刷したかったので、キンコーズを利用して厚紙に印刷した。

ダウンロード用のURLの準備であるが、シリアルコードを認証する仕組みが必要である。うちのサイトをホストしているレンタルサーバー(VPSの類は今の所持っていない)で好きなプログラムを動かそうと思ったら古の技術であるCGIを使うことになる。そういうわけで、CGIの仕様を再確認しながら「既知のシリアルコードを入力したらPDFを返す」CGIを適当にでっち上げた。

Tシャツ

サークルと言えばオリジナルTシャツ、ということで、アイコンの鳥をデカデカと印刷したTシャツを作った。実際の注文は、売り子氏がやってくれた。安いやつにしたせいか、黒が思ったほど黒くないが、ご愛嬌だ。

もう3週間早く用意しておけば某勉強会で活用できたのだが、まあ仕方がない。

一人反省会

この記事を書いた第一の目的は、今後の技術書典への参加を考えている人の参考にしてもらうためではない(もちろん、他人の参考になるところがあればそれは良いことだが、270ページ近い同人誌を書く人はそうそういないだろう)。どちらかというと、筆者の気持ちの区切りをつけるためである。

というのも、今回の技術書典でうちのサークルは「終了間際に紙書籍完売」という理想に近い結果を出したのに、筆者の頭の中では延々と「一人反省会」が行われているのである(病気か!?)。それを軽減するには、筆者が今回の即売会(の準備)の過程で行った想定、下した判断を「吐き出す」ことを試す価値があると考えた次第である。

(ちなみに、引っかかっているのは、「入稿時にPDF/X-1にできなかった件」「印刷部数をどうするべきだったか」「ラインナップと価格設定をどうするべきだったか」あたりである)

もうちょっと上手い判断のやり方はあったのか?どういう判断をしても結局モヤモヤが残るのか?わからない。わからないのだが、吐き出すことで楽になると、いいなあ…。


技術書典5に初サークル参加した記録/前日まで」への4件のフィードバック

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