Lie groups」タグアーカイブ

一次分数変換と球面の回転の話(0)

\require{AMScd}\def\Real{\mathbf{R}}\def\Complex{\mathbf{C}}\newcommand{\abs}[1]{\left\lvert #1\right\rvert}次の形をした複素関数 f一次分数変換という: f(z)=\frac{az+b}{cz+d},\quad \text{ただし \(ad-bc\ne0\).} 分母が0になるとき(z=-d/c のとき)は f(z) の値は複素数としては定まらない、のだが、値が複素数であることにこだわらなければここは \infty としておくのが都合がいい。逆に、z=\infty のときは、(z\to\infty の極限を考えれば分かるように)f(z) の値は a/c として定義できそうである。何がいいたいかと言うと、一次分数変換は、複素平面の関数というよりは、複素平面に「無限遠点」を加えたもの \Complex\cup\{\infty\} の関数をみるのが自然である。

複素平面に無限遠点を加えたもの \Complex\cup\{\infty\} は、球面と同一視できる(こうやって同一視したものをリーマン球面という)。球面上の点 P に複素平面の点 z をどう対応させるかというと、球の北極 (0,0,1) から P に直線を引いて、その直線が複素平面と交わる点 z を対応させる。逆に、複素平面の点 z に対しては、z と北極 (0,0,1) を結ぶ直線を引いて、それが球面と交わる(北極じゃない方の)点 P を対応させる。北極に対応する点は複素平面上にはないので、北極には無限遠点 \infty を対応させる。この対応を立体射影(stereographic projection)という。
projection-fig
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SO(2) と SO(3) が弧状連結であることの簡便な(?)証明

\def\Real{\mathbf{R}}\def\Complex{\mathbf{C}}\newcommand{\ip}[2]{\left\langle #1,#2\right\rangle}\newcommand{\vect}[1]{#1}\def\Ker{\operatorname{Ker}}\newcommand{\restrict}[2]{\left.#1\right\rvert_{#2}}\newcommand{\transpose}[1]{{#1}^T}\newcommand{\abs}[1]{\left\lvert #1\right\rvert}特殊直交群 SO(n) が(弧状)連結であることを示すのはこの記事に書いたやり方がおそらく正攻法なのだろうが、次元が低い時はもっと短い議論でできるんじゃないかなあと思った。

命題. SO(2) の元 A は次の形に書ける。 A=\begin{pmatrix} \cos\theta&-\sin\theta \\ \sin\theta&\cos\theta \end{pmatrix}
証明. A を成分表示して SO(2) の条件の式に代入してガリガリ計算すればわかる。
定理. SO(2) は弧状連結である。
証明. さっきの命題を使えば簡単。

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SU(n) と SO(n) が弧状連結であることの証明

\def\Real{\mathbf{R}}\def\Complex{\mathbf{C}}\newcommand{\ip}[2]{\left\langle #1,#2\right\rangle}\newcommand{\vect}[1]{#1}\def\Ker{\operatorname{Ker}}\newcommand{\restrict}[2]{\left.#1\right\rvert_{#2}}\newcommand{\transpose}[1]{{#1}^T}特殊ユニタリ群 SU(n) や特殊直交群 SO(n) が(弧状)連結であることは当たり前のようにバンバン使うけど自分でそらで証明できるか怪しいなあと思ったので、証明をつけてみることにした。
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R^3のベクトル積とso(3)のメモ

今回は \mathbf{R}^3 のベクトル積とか回転行列とかに関する覚え書き。割と初等的。大学2年ぐらいのレベルだろうか。オチはない。

定義とか

3次の実正方行列全体の集合を M(3,\mathbf{R}) で表す。3次の特殊直交群 SO(3) SO(3)=\{A\in M(3,\mathbf{R})\mid\det A=1,~{}^tAA=I\} で定める。特殊直交群の元はいわゆる回転を表す行列である。

3次の交代行列全体の集合を \mathfrak{so}(3) で表す。\mathfrak{so} は小文字のsoをフラクトゥールで書いたものである。 \mathfrak{so}(3)=\{X\in M(3,\mathbf{R})\mid X+{}^tX=0\} \mathfrak{so}(3) は3次元の実線形空間であり、\begin{align*} E_1&=\begin{pmatrix}0&0&0\\0&0&-1\\0&1&0\end{pmatrix},& E_2&=\begin{pmatrix}0&0&1\\0&0&0\\-1&0&0\end{pmatrix},& E_3&=\begin{pmatrix}0&-1&0\\1&0&0\\0&0&0\end{pmatrix} \end{align*}は一組の基底となっている。\mathfrak{so}(3) の元 X\in\mathfrak{so}(3) は実数 a,b,c\in\mathbf{R} により X=\begin{pmatrix}0&-c&b\\c&0&-a\\-b&a&0\end{pmatrix}=aE_1+bE_2+cE_3 と書ける。

ベクトル積

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