月刊LunarML進捗報告です。前回は
あたりです。
続きを読むLuaTeX 以前の TeX 処理系では \write18 によって TeX 文書中から外部コマンドを実行できた。しかし、 LuaTeX では Lua の機能 (os.execute) によって外部コマンドの実行ができるため、現在の LuaTeX からは \write18 による外部コマンド実行機能は削除されている。
詳しくは以下のブログ記事を参照されたい:
新しい LuaTeX だって \write18 したい – マクロツイーター
対策 (2) :外部コマンドが実行されない → shellesc パッケージ!
要するに、 shellesc パッケージを使えば \write の定義が書き換えられて、従来の \immediate\write18 がそのまま動く。\ShellEscape, \DelayedShellEscape というコマンドも提供されている。(\immediate なしの \write18 相当のことをするには \write18 そのままではなく \DelayedShellEscape を使う必要がある)
また、pdftexcmds パッケージで提供されている \pdf@system コマンドを使うという手もある。
というわけで、一般の利用者および LaTeX パッケージを書く人にとっては、これらは既に済んだ話である。しかし、TeX の実行を補助するツールを作る人にとっては、話はまだ終わっていない。
従来の \write18 によるコマンド実行の場合は、ログファイルに、実行したコマンドが
runsystem(ほにゃらら)...executed.
という感じで書き出されていた。このような実行ログは、 TeX の実行を補助するツールにおいて役に立つ場合がある。
しかし、LuaTeX における os.execute はログファイルに何も出力しない。これは困る。
LuaTeX で外部コマンド実行の際にログファイルにコマンドを吐き出すようにするには、
という手段が考えられる。(LuaTeX 本体の os.execute の定義を書き換えるのは、ハードルが高そうなので考えないことにする)
pdftexcmds パッケージの \pdf@system コマンドは、既に、実行時に
system(ほにゃらら) executed.
というメッセージを出力するようになっている。微妙に書式が違うが、まあ十分だろう。
一方で、 shellesc パッケージが提供する \write18 および \ShellEscape, \DelayedShellEscape コマンドは、実行するコマンドを書き出すという処理は特に行なっていない。
以前書いたような外部コマンドを実行する LaTeX パッケージのうち、 epstopdf パッケージは pdftexcmds パッケージの \pdf@system コマンドを使うので、ログファイルを調べることで実行されたコマンドを取得することができる。
epstopdf 以外の外部コマンドを実行する LaTeX パッケージは、基本的に「shellesc パッケージを読み込みつつ、従来通り \immediate\write18 を使用」していると思われるので、実行されたコマンド文字列をログファイルから取得する手段がない。
外部コマンドを実行するパッケージが、 shellesc パッケージに頼らずに直接 \directlua していた場合も同様である。
Lua コードによって os.execute の定義を置き換えてしまえば、 shellesc パッケージが使われていようが、直接 \directlua していようが、実行されるコマンド文字列を取得できる。
というわけで、 TeX 文書を処理する際に次のような TeX コードを実行しておけば、既存の TeX エンジンと同様にログファイルに出力してくれる:
\directlua{ local e=os.execute if e then local s=status.shell_escape or e() local function h(c,r,...) if c then texio.write_nl("log","runsystem("..c..")..."..(s==0 and"disabled"or(s==1 and"executed"or(r==nil and"disabled (restricted)"or"executed safely (allowed)")))..".\noexpand\n") end return r,... end function os.execute(c) return h(c,e(c)) end end }
(LuaTeX で外部コマンドを実行する関数は、 os.execute 以外にもいくつか存在するが、見なかったことにする。どうせ使われてないよね…?)
本家 Lua の os.execute の戻り値の仕様は、Lua 5.1 と Lua 5.2 で少し変化している。具体的には、 Lua 5.1 では C の system 関数の戻り値を整数としてそのまま返していたのが、 Lua 5.2 では、(POSIX の場合に)POSIX の仕様に沿って system 関数の戻り値を解釈するようになった。
LuaTeX はと言うと、ベースとなっている Lua のバージョンは 5.2 なのだが、 os.execute 関数の戻り値の仕様は Lua 5.1 当時のままである。
LuaTeX の os.execute 関数は本家 Lua のものではなく、独自に実装されたものなので、使用する Lua を 5.2 にアップグレードする際に変更し忘れたか、あるいは既存の Lua コードの互換性を考えてそのままにしたのだと思われる。
LuaTeX における os.execute 関数の実装は loslibext.c というファイルに入っている。
スクリプト言語で書いたプログラムをシェルコマンドとして実行したい時、 Unix の場合は shebang と呼ばれる行を書けば良い。
しかし、 Windows のコマンドインタープリター (cmd.exe) の場合はそういう風にはいかない。代わりに、バッチファイル (.bat) なり、バイナリの実行ファイル (.exe) を用意して、その中でスクリプト言語のインタープリターを呼び出す、という手法を使うことになる。
この場合、配布するファイルがバッチファイルと実行したいスクリプトファイルの2つになり、単独の実行ファイルを配布する場合に比べて2倍面倒である。1つのファイルを、バッチファイルとしてもスクリプトファイルとしても実行できれば良いのではないか。(このような、複数のプログラミング言語で解釈できるプログラムを polyglot と呼ぶことがあるようだ)
今回、対象とするスクリプト言語は Lua である。Lua スクリプトとバッチファイルの双方として実行可能なファイルを作りたい。 続きを読む
(倍精度)浮動小数点数でいろいろ遊ぶ際に、 Lua が便利なのではないかと思った。以下、特に断らない限り「浮動小数点数」と言ったら倍精度のものを指す。
Lua はC言語で実装されていて、数値の扱いについてはC言語と近い挙動を示すと考えられる。C言語と違って累乗の演算子 (x^y
) があるのが地味に便利である。
Lua 5.2 以降では、浮動小数点数の16進表記をサポートするようになった。ソースコード中にリテラルで 0x1.fp2
と書けるし、文字列から数値に変換するときに tonumber("0x1.fp2")
と書けるし、数値から文字列に変換するときは %a
または %A
を使って string.format("%a",7.75)
と書ける。
あとは、標準ライブラリに足りない機能があったときに簡単にC言語で拡張ライブラリを書ける。
前回はFlashAirに直接LEDをつないでLEDを制御したが、今度は秋月のFlashAir DIP IOボードキットを介してLEDを制御してみよう。
用意するもの
FlashAirでLチカをやってみよう。
用意するもの:
Wi-FiとLuaとPIO等が使えるオモチャSDカード、FlashAirで遊んでみよう。