昨年末に「2018年振り返り」という記事を書いたが、これから当面の間、ああいう振り返り記事(活動報告)を定期的(1ヶ月か2ヶ月ごと)に書いていきたいと思う。 続きを読む
「Haskell」タグアーカイブ
最速のフィボナッチ数計算を考える
Qiitaにこういう記事を書いた:
Haskellでフィボナッチ数列 〜Haskellで非実用的なコードを書いて悦に入るのはやめろ〜
↑の記事ではメモ化しない計算法が遅いこと、Haskellには遅延評価の罠があって正格にすると早くなること、「n番目のフィボナッチ数」をピンポイントで計算する場合は(行列またはQ(√5)の)冪乗を使う方法が早いこと、一般項(ビネの公式)をその辺の浮動小数点数で計算するのは使い物にならないこと、などを述べた。
まあ、「Haskellでは fib 0 = 0; fib 1 = 1; fib n = fib (n-1) + fib (n-2)
でフィボナッチ数が計算できます!」に対する注意喚起としてはこれで十分すぎる内容なのだが、「n番目のフィボナッチ数をピンポイントで計算する方法」についてはもっと深掘りできる。
この記事では、数学的な考察も交えて、「n番目のフィボナッチ数をピンポイントで計算する方法」をより高速化してみたい。(計算量としてはどっちみち O(log n) くらいなのだが、定数倍の部分で高速化する)
なお、記事タイトルには「最速の」と書いたが、この記事で紹介するアルゴリズムが最速だと主張するわけではない(筆者の知らない、もっと早いアルゴリズムが存在するかもしれない)。 続きを読む
アプリカティブ関手ってなに?モノイド圏との関係は?調べてみました!
この記事は Category Theory Advent Calendar 2018 7日目 かつ Haskell (その2) Advent Calendar 2018 7日目の記事です。
Category Theory Advent Calendar 2018の6日目はcorollary2525さんの「随伴は あらゆるところに 現れる」、8日目は空席、9日目はt_uemura669101さんの「トポスと高階論理」です。
Haskell (その2) Advent Calendar 2018の6日目は空席、8日目はtakoeight0821さんの「Type defaultingについての初級的な解説」です。
この記事はどういう記事か
圏論の方から来た人向け:
デカルト積やテンソル積の一般化である「モノイド積」の話と、「内部ホム」の話をします。文献によっては内部ホムはモノイド積の右随伴として導入されますが、ここではモノイド構造を仮定せずに内部ホムの定式化(閉圏)をします。
Haskellの方から来た人向け:
この記事ではHaskellにおけるアプリカティブ関手の使い方は解説しません。Haskellの方から来た読者はすでにアプリカティブ関手をある程度知っており、圏論的な話にチョット興味がある、と仮定します。
これを読めば、「モナドは自己関手の圏におけるモノイド対象だよ、何か問題でも?」と同じノリで「アプリカティブ関手はモノイド圏における強laxモノイド関手だよ、何か問題でも?」と言って他人を煙に巻くことができます。 続きを読む
SML、はじめました
動機
プログラマーの3大欲求と言えば「プログラミング言語(処理系)を作りたい」「テキストエディターを作りたい」「OSを作りたい」である。これらの欲求は定期的に湧いてきて、多くの場合は実を結ぶことなく霧消する。
そんなわけで先日、筆者にもプログラミング言語の処理系を作りたい欲求が湧いてきた。
具体的には、ML系の型推論を持った言語を作りたい。また、エフェクト推論・リージョン推論のような技法を試したい(一旦普通に処理系を作り、その後に改造してエフェクト推論やリージョン推論を試す)。
別の方向性の動機として、型のないスクリプト言語(具体的にはLua)で大きなソフトウェアを書くのがだるい。静的型のついた言語からスクリプト言語にコンパイル(トランスパイル)するやつを作りたい、というものがある。
最近はJavaScriptへトランスパイルする処理系は色々登場したが、それ以外のスクリプト言語を吐き出す処理系というのはまだ少ないように思う。
これらの動機付けが混ざった結果、「型推論のある言語からスクリプト言語へのコンパイラーを作れば良い」という結論に至った。 続きを読む
Haskell でのデバッグ手法あれこれ
プログラムにバグはつきものです。強力な型システムを備えている Haskell でもそれは同じです。この記事では、 Haskell プログラムのデバッグ手法をいくつか挙げてみます。
なお、使用している GHC は 8.2.2 です。より新しいバージョンで追加されるであろうより便利な機能は、この記事の対象外です。
「週刊 代数的実数を作る」創刊
コンピューター上で実数を取り扱うには、いくつかの方向性がある。普通は浮動小数点数によって近似することが多いと思うが、多倍長計算を始めとする、「コストをかけてでも正確に」計算するという方向性もある。
そのような「正確に取り扱える」実数のクラスとしては、整数(多倍長整数)や有理数はある程度普及していると思う(標準で備えているプログラミング言語がある)。それよりも広いクラスとして、代数的実数、つまり(整数または有理数係数)代数方程式の根となるような実数全体、というものがある。
代数的実数が計算機で取り扱えるということ自体は割と知られた事実だと思うが、実装は割と大変で、工夫の余地がある。有理数のように「GCD さえ実装すればよい」というものではない。
かくいう私も最近までその辺を真面目に勉強しようとは思っていなかったわけだが、何となくモチベーションが湧いてきたので、代数的実数に関するアルゴリズムを勉強しつつまとめたものを記事として Web 公開してみようかと思った次第である。
実装には筆者の好みで、 Haskell を使う。実際のところ、 Haskell による代数的実数の実装は既にあるようだが、まあ気にしない(自身の勉強が主目的なので)。
というわけで、以下のページで公開している:
https://miz-ar.info/math/algebraic-real/
「週刊」と名乗っているが、毎週末に更新することを目指している。果たしていつまで続くかは不明である。 続きを読む
Haskell で CGI を書く:Network.CGI(cgiパッケージ)
Haskell で CGI を書いてみよう。 続きを読む
Haskell でオレオレ Num クラスを作るための考察
以前の記事に書いたように、 Haskell 標準の Num クラスには色々と不満がある:
結論としては「過去に遡って Num クラスの定義を変えるしかない」だったわけだが、時間干渉も因果律への反逆もできない我々としてはその選択肢は現実的ではないので、独自の Num クラス(オレオレ Num クラス)を作ることにする。この記事は、筆者がオレオレ Num クラスを作った際に考えたことをまとめたものである。
雰囲気で並列プログラミングをやってみる
Haskell での並列プログラミングをマスターしたい、とは言わないが、「全然わからない、俺たちは雰囲気で並列プログラミングをやっている」程度のことは言えるようになりたい。
今回は「データ構造の各要素を並列で評価する」ことを目指す。以下の内容は筆者がいい加減な知識で書いているので、そういうつもりでテキトーに読んでほしい。 続きを読む
Haskell (GHC) の型レベル自然数とリフレクションを試してみる
【2020年4月20日追記】GHCの型レベル自然数については、より網羅的な記事を書いた。型レベル自然数についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事も参照いただきたい:GHCの型レベル自然数を理解する【追記終わり】
最近のGHCでは、自然数をパラメーターとするデータ型を定義できる。固定長リストの長さを型に持たせるとか、行列の大きさを型に持たせるとか、そういうことができる。あるいは、自然数 m に対して Z/mZ を表す型を作ることもできる。m を素数とすればこれは有限体となる。
実際に、型レベル自然数を使って Z/mZ に相当する型を作ってみよう。(名前は FiniteField とした) 続きを読む