プログラミング」カテゴリーアーカイブ

C言語でクロージャーを実現したい、あるいは実行時のコード生成によるクロージャー

導入:クロージャーについて

昨今ではクロージャーを使えるプログラミング言語は珍しくなくなった。クロージャーとは、関数の引数だけではなく、外のスコープにある変数を参照できる関数のことである。

例えば、次のJavaScriptコードでは、関数を返す関数 f を定義している。 f の中で定義された無名関数は、外側の変数 x を参照できている。

function f(x) {
    return function(y) {
        return x + y;
    };
}

JavaScriptではネストした関数を使わなくても、bindメソッドによって同等の処理を記述することができる:

function g(x, y) {
    return x + y;
}
function f(x) {
    return g.bind(null, x); // gの第1引数を束縛する
}

残念ながらC言語にはクロージャーはない。関数の中に関数を書けないからだ。

しかし、クロージャーと同等のこと、つまり関数に追加の引数を渡すことはできないのだろうか?

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LunarMLが自身をコンパイルできるようになった

LunarML進捗報告、号外です。前回の記事

からそんなに時間が経っていませんが、「自分自身をコンパイルできるようにする」という重要なマイルストーンを達成したので報告します。

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HaskellでつくるAArch64版MinCaml

前回の記事

ではBrainfuckコンパイラーを書きましたが、やはりレジスター割り付けもしないコンパイラーでは物足りないと思ったのでした。

コンパイラーを作るオンラインの教材として前回の記事ではMinCamlと「低レイヤを知りたい人のための〜」を挙げましたが、後者はレジスタ割り付けはやらないみたいなので、MinCamlをやっていくことにします。

単にAArch64対応させるだけなら元のMinCamlとの差分だけを書けば良いのですが、どうせなのでHaskellに移植します。

先に成果物を載せておくと、

です。

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AArch64アセンブリーを出力するBrainfuckコンパイラーを書いてみる

ここ数年、LunarMLという「スクリプト言語のソースコードを出力する」コンパイラーを書いているわけですが、自分の中でコンパイラーと言ったらやっぱりアセンブリーを出力するものが連想されます。アセンブリーを出力する処理系を書いたことがないのにコンパイラー好きを名乗るわけにはいかないなあと思うので、ここで一念発起してアセンブリーを出力する処理系に取り組んでみようと思います。

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LunarML進捗・2022年4月

月刊LunarML進捗報告です。前回は

で、3月はHaskellの記事を書くのに忙しかったので休刊でした。

今月の進捗を一言で言うと、JavaScriptバックエンドの実装を進めました。

面白いと思った方はGitHubにスターをつけてください:

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浮動小数点数の文字列化(基数変換)

動機付けと問題

計算機の内部では二進浮動小数点数が使われることが多い一方で、プログラムのソースコードやテキストベースのデータ形式(例:JSON)では十進小数が使われることが多い。

データのシリアライズ等で、内部的な二進浮動小数点数を十進小数に変換して、再度二進小数に戻すという操作が考えられる。この時、元々の二進小数の値が保持されることが望ましい。

有限桁の二進小数は原理的には有限桁の十進小数で表現できるが、指数部が大きかったり小さかったりすると仮数部の桁数も膨張するため実用的ではない。

そこで、基数変換の際に丸めが発生することを許容して、二進小数→十進小数→二進小数の変換が恒等写像となるようにしたい。ただし丸めの方法は最近接丸めであるとする。この時、

  • 途中の十進小数の仮数部は何桁あれば十分か?
  • なるべく短い桁数の十進小数を、正しい丸めで得るためのアルゴリズムはどのようなものか?

という問題が考えられる。

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