プログラミング」カテゴリーアーカイブ

バイトコードVMのための調査

LunarMLの今年の目標に「REPLとインタープリターを実装する」というのがある。これまではLunarMLをLuaやJavaScriptをターゲットとするコンパイラーとして実装してきたけど、

  • REPLによるインタラクティブな実行
  • 書いたSMLコードを直接実行(一旦LuaやJavaScriptコードを生成するのではなく)

できると嬉しいよね、という話だ。(REPLを備えたStandard ML処理系は色々あるが、LunarMLとコンパチブルなREPLが欲しければ自分で作るしかない。)

つまりインタープリターだが、構文木を走査するインタープリターは遅そうだ。効率的な実行のためには、バイトコードとVMを設計したい。

バイトコードへのコンパイラーはSMLで、VM(ランタイム)はSMLによる実装とC言語による実装の両方を用意することをイメージしている。

C言語による実装を用意することで、高速な実行が期待できるだけではなく、「コンパイル済みバイトコード+C言語で書かれたランタイムによるbootstrap問題の解決」もできる。つまり、現状の「LunarMLを動かすためにはSMLコンパイラーが必要」という状態から「CコンパイラーまたはSMLコンパイラーがあればLunarMLが動く」という状態にできる。

ではバイトコードと抽象機械はどうやって設計するか?

続きを読む

C言語でクロージャーを実現したい、あるいは実行時のコード生成によるクロージャー

導入:クロージャーについて

昨今ではクロージャーを使えるプログラミング言語は珍しくなくなった。クロージャーとは、関数の引数だけではなく、外のスコープにある変数を参照できる関数のことである。

例えば、次のJavaScriptコードでは、関数を返す関数 f を定義している。 f の中で定義された無名関数は、外側の変数 x を参照できている。

function f(x) {
    return function(y) {
        return x + y;
    };
}

JavaScriptではネストした関数を使わなくても、bindメソッドによって同等の処理を記述することができる:

function g(x, y) {
    return x + y;
}
function f(x) {
    return g.bind(null, x); // gの第1引数を束縛する
}

残念ながらC言語にはクロージャーはない。関数の中に関数を書けないからだ。

しかし、クロージャーと同等のこと、つまり関数に追加の引数を渡すことはできないのだろうか?

続きを読む

LunarMLが自身をコンパイルできるようになった

LunarML進捗報告、号外です。前回の記事

からそんなに時間が経っていませんが、「自分自身をコンパイルできるようにする」という重要なマイルストーンを達成したので報告します。

続きを読む

HaskellでつくるAArch64版MinCaml

前回の記事

ではBrainfuckコンパイラーを書きましたが、やはりレジスター割り付けもしないコンパイラーでは物足りないと思ったのでした。

コンパイラーを作るオンラインの教材として前回の記事ではMinCamlと「低レイヤを知りたい人のための〜」を挙げましたが、後者はレジスタ割り付けはやらないみたいなので、MinCamlをやっていくことにします。

単にAArch64対応させるだけなら元のMinCamlとの差分だけを書けば良いのですが、どうせなのでHaskellに移植します。

先に成果物を載せておくと、

です。

続きを読む

AArch64アセンブリーを出力するBrainfuckコンパイラーを書いてみる

ここ数年、LunarMLという「スクリプト言語のソースコードを出力する」コンパイラーを書いているわけですが、自分の中でコンパイラーと言ったらやっぱりアセンブリーを出力するものが連想されます。アセンブリーを出力する処理系を書いたことがないのにコンパイラー好きを名乗るわけにはいかないなあと思うので、ここで一念発起してアセンブリーを出力する処理系に取り組んでみようと思います。

続きを読む