北アルプス縦走:黒部五郎岳・鷲羽岳

先日、妻と北アルプスを縦走してきたので顛末を記す。

黒部五郎岳・鷲羽岳 – 2022年08月22日 [登山・山行記録] – ヤマレコ

計画

久しぶりに北アルプスに行きたい。9年前の縦走以降、再びあの山域に赴きたいと思い続けてきたが、いい加減実行に移す時ではないか。

今回は妻と2人で行く。新婚旅行ならぬ新婚登山だ。

目的とする山域は富山県の右下、雲ノ平、水晶岳、鷲羽岳、黒部五郎岳のあたりだ。最初は折立おりたて(富山県)→黒部五郎岳→鷲羽岳・水晶岳→雲ノ平→折立で一周しようかと思っていたが、天気予報が悪い割に日程が長すぎる(4泊以上)。そこで、雲ノ平は今回は諦めて、新穂高温泉方面に抜けることにした。これで3泊程度の登山になる。

最終的な計画としてはこうなった:

折立→太郎平キャンプ場(泊)→黒部五郎岳経由で三俣山荘(キャンプ場泊)→サブザックで鷲羽岳・水晶岳にピストン→双六小屋(キャンプ場泊)→小池新道経由で新穂高温泉に下山

体力・天候的にきつい場合は鷲羽岳や水晶岳はカットできる。また、何らかの事情で縦走が難しい場合は太郎平から薬師岳に登って折立に引き返すこともできるだろう。

登山口・折立への交通は富山地方鉄道の路線バスが1日2本ある。しかし、朝から登り始めるには富山駅を早朝に出発する必要があり、富山駅付近に前泊する必要がある。

それとは別に、折立へは東京からの夜行バス「毎日あるぺん号」というのがあるらしい。「毎日あるぺん号」は毎日新聞旅行がやっているツアーバスで、主に東京から各地への登山口のアクセスのほか、山小屋の宿泊がセットになったツアーを提供しているようだ。

「毎日あるぺん号」の評判を調べたら「(天候などで)直前にキャンセルしたら(山小屋の宿泊分も含めて)多額のキャンセル料がかかった」というような話が出てきたが、今回はすでに直前になっていて天気予報もわかっているので、その心配はないだろう。というわけで「毎日あるぺん号」を使うことにした。

下山時の交通も調べておく必要がある。今回順調にいけば新穂高温泉に降りるので新穂高温泉からの交通はもちろん調べるが、山中で不都合があって別の登山口に降りることになった場合の交通事情も最低限調べておいた方が良い。今回新穂高温泉以外に降りるとしたら折立に引き返すことになる。折立からはやはり地鉄のバスがあるわけだが、本数が少ないのでタクシーを使うことになるかもしれない。

今回我々はテント泊をするので、山の中の予約は原則として必要ない。が、どうやら混雑する時期は予約が必要なキャンプ場もあるようだ。今回はその時期には該当しなかった。

0日目 移動

久しぶりの登山だ。準備万端整えて、「毎日あるぺん号」が出発する東京・竹橋に向かう。集合時間の1時間ほど前に地下鉄の駅を出ると、すでに登山客が数人うろうろしていた。毎日新聞社のロビーに早くから入っていいものか自信が持てなかった我々はしばらく路上で待機していたが、後からやってきた人がロビーに入っていくのを見て我々も続くことにした。ロビーの中にはトイレもあった。

受付開始は出発の15分前。注意事項の説明を聞き、受付をして、バスに乗り込む。バスの中で必要なものはあらかじめサブザックに移しておくと便利だ。

折立行きは人数によって室堂行きの便と途中まで同じバスに乗るらしい。この日もそのケースで、折立行きの我々は途中の立山あるぺん村(立山町にある道の駅みたいな施設)で小型バスに乗り換えることになる。

バスは新宿(バスタ新宿ではなく、都庁の駐車場)でさらなる客を乗せ、北陸へ向かう。

1日目 折立〜太郎平

立山あるぺん村に5時過ぎに着いた時、空は晴れていた。ここでバスを乗り換える。コンビニにも行ける。乗り換え先のバスの方が足元が広かった。

有峰林道を通れるようになるのが午前6時のためか、バスは5時45分ごろまであるぺん村で待機していた。室堂行きのバスは先に出発していた。

バスは常願寺川を渡り、亀谷温泉の廃墟のそばを通り、有峰林道に入っていく。林道の途中からは有峰湖が間近に見えた。

有峰湖

6時40分ごろ、折立に到着。筆者にとっては10年ぶりの折立、妻にとっては初めての登山口だ。

乗ってきたバス
折立トイレ

マイカーで来ている人も多いようで、車が多数停まっている。準備運動している人たちもいる。我々も朝食(パン)を食べ、トイレに行き、準備を整えた。ところで折立ではドコモの電波が通じるようになっていた。

7時10分、行動開始。最初は樹林帯の中を登る。最初が一番急だと思って、適宜休憩を取りながら着実に歩みを進めていく。

9時ごろ、三角点に到着。ベンチがある。休憩。

三角点

三角点からは登りも緩やかになって、楽……というほどではない。勾配は緩くても、トータルの標高差はしっかりある。実際のところ標高差的にはやっと半分だ。まあここから定期的にベンチがあるのは気持ち的に楽かもしれない。

登山道から後ろを振り返ると有峰湖が見えた。「北アルプス三大急登」というのがあるが、「北アルプス三大ダム湖」を選ぶとしたら有峰湖、黒部ダム、高瀬ダムだろう。

有峰湖

一方、進行方向の左手を見ると高原状の大地が見える。弥陀ヶ原か?地図で確認したが、それっぽい。そうするとその左にあるのは埋蔵金伝説の鍬崎山か。山の間に富山平野も見える。

鍬崎山と弥陀ヶ原
山の間から富山平野

10時50分、五光岩ベンチ。地図によると向かいの山の岩が五光岩というようだ。五光岩を眺められるベンチということか。

五光岩

誰かが「太郎平小屋が見える」と話すのが聞こえた。行く先に目を凝らすと、確かにそれらしいものが見える。しかしコースタイム的には1時間半もかかる。遠い。

太郎平小屋

途中、チングルマの群生があった。残念ながら花の時期は終わっており、種の状態になっている。

チングルマ

高山植物に詳しくなりたい。今の自分はハイマツとチングルマとコマクサくらいしかわからないのではないか。

行く先の左手、薬師岳の上の方は雲に覆われていた。今日は比較的天気がいい方だと思っていたが、薬師岳は恥ずかしがりのようだ。

薬師岳方面

太郎平小屋に到着。キャンプ場の受付は現地で行うとのこと。せっかくなので「中部山岳国立公園 太郎兵衛平」の標識で写真を撮ってもらった。

太郎平小屋
太郎兵衛平

天気は曇りだ。それでも、太郎平からは雲の切間に水晶岳やワリモ岳が見えた。水晶岳にはピークが二つある。ワリモ岳の右は祖父岳か鷲羽岳か。三俣蓮華岳や黒部五郎岳方面は完全に雲に覆われて見えない。

雲ノ平・水晶岳方面

太郎平小屋から薬師峠(太郎平キャンプ場)に歩く間に雨に降られた。少しでも濡れたくないので、木道の途中で雨具とザックカバーを出す。

薬師峠

13時前に薬師峠に到着。既にいくつかテントが張られているが、場所には余裕がある。適当に場所を見繕って我々もテントを張る。テン場代は一人1000円。その他、コーラとビールが売られている。山で飲むコーラはうまいのか?気になったが、今回はやめておいた。

キャンプ場の名前は手元の地図(「山と高原地図 2016年版」)では「薬師峠キャンプ場」だったが、ネットの情報および現地では「太郎平キャンプ場」となっていた。最近変わったのだろうか。

太郎平キャンプ場

結構早く着いたので、昼寝をしたりご飯の準備をしたりした。時々雨が降った。

食事に関しては妻に任せており、この日は美味しいリゾットだった。山でも妻の手料理が食べられるのは幸せである。

我々と同じく折立から登ってきた大学生パーティーがおり、槍ヶ岳を目指すようなことを言っていた。黒部五郎経由なら明日以降も一緒になる可能性があるが、結局それ以降は出会わなかった。

太郎平では電波が入ったが、薬師峠では電波は弱く、実質入らなかった。

妻の体調が悪い。頭と胸が痛いという。高山病だろうか?もし明日になっても良くならなければ下山もやむを得まい。

2日目 雨の黒部五郎

3時前に起きた。この時点では雨は降っていなかった。

妻の調子は良くなっていたので、4時半に予定通りの行動を開始する。太郎平からは富山平野の夜景が見えた。

途中、太郎山に立ち寄る。三角点を確認した。

太郎山三角点

そのうちに雨が降ってきた。レインコートを着てザックカバーを装着する。

登山道は結構浸食が進んでいるが、時々木道が整備されている。

木道

6時54分に北ノ俣岳に到着。風が吹いていたのでケルンの陰で休む。

北ノ俣岳

正直言って展望は全くない。それどころか雨も降っている。

最近「人はなぜ山に登るのか」みたいな映画を見たが、今の問題は「人はなぜ雨なのに山に登るのか」だ。なんで?

北ノ俣岳からは中俣乗越まで降る。一旦稼いだ標高をわざわざ下げるのは勿体無い。山登りの嫌なところだ。

8時半、中俣乗越に到着。ここからは黒部五郎岳まで登る一方だ。

中俣乗越

10時ごろ、ライチョウの親子を目撃。急いで一眼レフを取り出して写真と動画を撮る。前に遭遇した時は登山道上にいたりしたが、今回は登山道の脇にいるので少し遠い。

ライチョウ

子供はかなり大きくなっているが、親は見張り役をやっているのでそれとわかる。子供が全部で何羽いるのかは判然としなかった。

10時50分、黒部五郎の肩に到着。荷物をデポして空身で山頂を目指す。

黒部五郎の肩

山頂からは何も見えない。妻とお互いの写真を撮って戻る。今はガスの中でも、いつか黒部五郎岳を見たときにあそこに登ったんだと実感できる時が来るだろう。

黒部五郎岳

11時半、肩を出発。黒部五郎カールの急坂を下る。カールには雪渓が残っていた。

雪渓

計画ではこの日三俣山荘まで行くことにしていたが、果たして辿り着けるだろうか。計画通りに行くなら13時までに黒部五郎小舎に着いているべきだが、もし間に合わなかったらどうするか。三俣山荘まで行かずに今夜黒部五郎小舎で泊まっても良いが、その場合翌日以降に皺寄せが来る。妻は計画通り水晶岳に登りたいと言っており、今日中に三俣山荘まで行きたそうだった。

登山道は時折水の流れを越えてゆく。この水は黒部川の一部となり、やがてダムや扇状地を潤すのだろう。

雪渓から流れ出た水

このカールには巨石がゴロゴロしている。黒部五郎の五郎とは「ゴーロ」が転じたものだそうだ。

巨石

雨の中を歩く我々の登山靴は中までずぶ濡れになっていた。手入れが足りなかったのか、登山靴の防水機能は既に失われてしまったようだ。辛い。服も濡れてしまったが、Tシャツに関しては山小屋で調達できる可能性がある。

雨の中の歩きで、足が思うように進まない。何組もの登山者に追い越された。

もはやこの日のうちに三俣山荘まで辿り着くのは不可能だ。コースタイム9時間の計画は我々には無謀だった。なんとか黒部五郎小舎に辿り着くことだけを考えよう。明日以降のことはその後で考えれば良い。

登山道は先の見えない樹林帯の中へ入っていく。もちろん、ガスの中だからどっちにしろ視界はないのだが……。

時折休憩を挟みながら歩き続けた14時過ぎ、ようやく開けたところに出た。ガスの向こうに建物が見える。黒部五郎小舎だ。助かった。

ガスの向こうに小屋
黒部五郎小舎

テントの受付と同時に、2人分のTシャツを購入する。残念ながら男性用の半袖M/Lサイズは売り切れており、筆者は長袖を購入することになった。テン場代は一人2000円、Tシャツは半袖が4000円、長袖が4500円。トイレは1回200円だ。

キャンプ場は小屋から少し南に歩いたところにある。我々を含めて5〜6張程度だった。

黒部五郎キャンプ場

色々濡れたのが辛い。小屋泊ならば乾燥室を借りられることもあるかもしれないが、テント泊にそれはない。靴下の予備はあるが、できれば下山後の温泉で履き替えたい。

一方で、この情勢下では小屋泊特有の難点もある。スタッフにコロナ陽性者が出た場合、小屋が急遽休業することがあるのだ。実際、受付時に見ると「太郎平小屋のスタッフに陽性者が出たため22日から休業」の旨が張り出されていた。

明日以降の行程を考える。鷲羽岳と水晶岳に登るのであれば明日は三俣山荘止まりになるだろう。その場合、明後日の下山がキツくなる、もしくはその日中に帰宅できなくなる。一方、計画通り双六小屋まで進むのであれば少なくとも水晶岳は諦めることになる。

結局、水晶岳は諦め、三俣山荘から鷲羽岳だけをピストンすることにした。その後は予定通り双六小屋まで進む。

この日の夕食は、わかめやエビが入った棒ラーメンだった。

夕食を食べ終わった17時過ぎ、外を見ると空が少し晴れていた。他のテントの人は濡れたものを乾かそうとしていたようだ。我々ももっと早くからそうすればよかった。

北側には黒部川の谷を挟んで大地が見える。雲ノ平だろうか。こうして見ると雲ノ平は結構標高が高いことが実感させられる。地図によるとここは2340m、雲ノ平は2500mほどある。

黒部五郎小舎

黒部五郎小舎のトイレはし尿と紙を分けるのだが、紙は「手をかざすと開く」電動の入れ物に入れる方式だった。これは翌日の双六小屋も同じだった(黒部五郎小舎と双六小屋は同じ系列)。

3日目 鷲羽岳

朝3時に起き、5時過ぎに行動開始する。靴下は濡れたままだ。辛い。

登山開始

はじめは樹林帯を登る。次第に樹高が低くなっていき、ハイマツ帯の中を歩くようになる。

樹林帯からハイマツ帯へ

登りだけではなく、斜面のトラバースもあった。

6時半過ぎ、三俣山荘への巻道の分岐に到着。少し休む。

分岐

ここからは巻道を進むのだが、巻道といえどアップダウンがそこそこある。

チングルマがもう種になっているのは書いた通りだが、チングルマと同じく花弁が5枚の小さな白い花が咲いていた。後で調べた感じではコウメバチソウかもしれない。

登山道が川のようになっている箇所もあった。登山靴が濡れているので気にしても仕方がない。

川と化した登山道

途中、雪渓の下を通過した。時期が早かったら雪渓の上を歩くことになっていたかもしれない。

雪渓の下を通過

ようやく開けたところに出て、人工物を見つけた。キャンプ場だ。キャンプ場とハイマツの合間を進んでいくと三俣山荘が姿を現した。

三俣のキャンプ場
三俣山荘

筆者は以前(9年前)、三俣山荘に来たことがあるが、展望食堂は相変わらずのようだった。いや、メニューにジビエ丼が増えたのか。

展望食堂
展望食堂メニュー

ここで必要な荷物をサブザックに移し、大きい荷物はデポする。鷲羽岳へアタックだ。

筆者が9年前に鷲羽岳へのアタックを断念した時はもっと天候がマシだった気もするが……。まあダメそうなら引き返すしかあるまい。

山荘を出てしばらくは水平な道を歩く。ここにあの「伊藤新道」の分岐がある。9年前に来た時は「知っていればなんとかわかる」レベルの分岐だったが、2022年には立派な道標が立っていた。伊藤新道が復活したら是非歩いてみたいものだ。私のような沢登りの心得のない者に歩けるレベルの道になればの話だが……。

伊藤新道分岐

道はすぐに上りになる。ガレの中に所々ハイマツがある。残念ながら風の遮蔽になりそうな感じではない。筆者の経験の中では、立山や薬師岳の登りを彷彿とさせた。

鷲羽岳登り

相変わらず展望はなかったが、晴れていれば右手に鷲羽池が見えたのかもしれない。

9時17分、鷲羽岳山頂に到着。一面のガスだ。晴れていれば黒部源流や雲ノ平が一望できただろうか。

鷲羽岳山頂

山名標で写真を撮ってもらう。少し休んで、降り始める。

登るときにもしかしてと思ったのだが、鷲羽池への分岐のような箇所を見つけた。ガスっている今は確信が持てないので、鷲羽池に行くときは晴れた時に行くべきだろう。

分岐?

降っている途中、ガスが次第に晴れてきた。ガスの向こうに黒部源流が見える。ガスの向こうに三俣山荘が見える。そのうちガスは晴れ、はっきりと見えるようになった。

ガスの向こうに黒部源流
ガスの向こうに三俣山荘

夢中で写真を撮る。黒部源流の渡渉点はあの辺りか。あの斜面の上は雲ノ平・日本庭園か。雲ノ平と黒部源流を結ぶルートは急坂だ。登っている人は大変だろう。

黒部源流

三俣山荘の向こうは三俣蓮華岳だ。頂上はギリギリ見えるか見えないかというところだ。

三俣山荘

三俣蓮華岳の右手には黒部五郎岳。これも山頂は見えるか見えないか。なるほどあれが黒部五郎カール。北ノ俣岳は一応山頂まで見えるのだろうか。

黒部五郎岳

昨日あそこを歩いたと思えるのは気分がいいものだ。雨の中でも縦走した甲斐があった。

左手には硫黄尾根、北鎌尾根、そして常念山脈の山々が見える。燕岳が見えているのか。槍ヶ岳は流石に雲の中だ。

硫黄尾根など

三俣蓮華岳と西鎌尾根の間、今日泊まる予定の双六小屋は見えた。

双六小屋

元々悪天候を覚悟して来たので、少しでも景色が見えたのはラッキーだった。

ちょうど山荘に戻ったタイミングでヘリが飛んできた。ヘリも晴れるのを待っていたのだろうか。荷上げが行われているようだった。

荷上げ用ヘリコプター

小屋の前で荷物の整理をしていると、雲の向こうに槍ヶ岳のシルエットが見えた。写真を何枚も撮った。

槍ヶ岳

11時過ぎに三俣山荘を出発。フルの荷物を持った登りはやはり辛い。振り返ると鷲羽岳、それに水晶岳とワリモ岳が見える。鷲羽岳の山腹には伊藤新道が真っ直ぐに刻まれている。

祖父岳、水晶岳、ワリモ岳、鷲羽岳
鷲羽岳と三俣山荘

行く手の稜線、三俣蓮華岳から双六岳方面を見ると、歩いている人が小さく見えた。我々も早くあそこに辿り着きたい。

三俣山荘から双六小屋までは、稜線ルート、中道ルート、巻道ルートの3つがある。曇っていたら巻道ルート、晴れていたら稜線ルートを行こうかと思っていたが、さっき晴れたので稜線ルートを行くことにする。

三俣蓮華岳の最後の登りは急で、きつい。なんとか登り切ると、天気は再び曇ってしまった。残念だ。

三俣蓮華岳・最後の登り
三俣蓮華岳
富山市・高山市・大町市

気を取り直し、写真を撮って進む。三俣蓮華岳の山頂からは登山道も三方に伸びているので、間違った方向に降りないように注意したい。

三俣蓮華岳と双六岳の間、丸山の周辺はなだらかで、平原もあった。というか山頂がどこなのかよくわからなかった。風が強い中で休憩を取る。

丸山付近

左手の斜面の下には巻道ルートが見える。雪渓もある。時折、ガスが晴れて他の山々が見える。硫黄尾根の下部は白く、輝いているようだ。

硫黄尾根

中道ルートの分岐を越えて、いよいよ双六岳への最後の登りだ。実質今回の登山で最後の登りだと思って踏ん張る。あと少しだ。

中道・稜線分岐

14時過ぎ、ついに双六山頂に到着。山頂にはすでに5〜6人いた。面白いことに山名標は3つほどあった。

双六岳山頂
双六岳山頂

東側の展望はある程度ある。鷲羽岳の右手に見える、白くて丸い山は野口五郎岳か。黒部五郎岳は残念ながら見えなかった。

双六岳を後にして双六小屋に向かう。最初は平坦な場所を歩いた。小石で覆われた大地の上をマダラ状に草が生えている感じである。

平坦

平らな道を歩いたかと思えば、今度は急な下りだ。行先に、近くて遠い双六小屋が見えてくる。その向こうは樅沢岳で、ジグザグの登山道が山肌に刻まれている。今回あそこを登る必要がないのはラッキーだ。

双六岳からの下り

急な坂を下り終わり、双六小屋に到着。

双六小屋

荷物を下ろしたかったが、双六小屋の前のベンチは人で一杯だった。酒を飲んでいる者、軽食を食べている者、動画を撮っている者。自分達が休むにはさっさとテントを立てた方が良さそうだ。

双六小屋ベンチ

小屋に入ってキャンプの受付をする。黒部五郎小舎と同じく、一人2000円、トイレ1回200円だ。

双六小屋のTシャツは4〜5種類あったが、男性用M/Lサイズはやはり売り切れだった。残念。代わりに手拭いを購入した。

テント場は小屋の裏、池の手前に広がっている。トイレと水場からは遠い。風が強く、設営に苦労した。

テント場

双六小屋では電波(ドコモ)が入らないというのが前に来た時の記憶で、実際小屋の中やテント場では繋がらなかったが、小屋の北側の広場の端ではギリギリ電波が入るようだった。石垣に腰掛けてスマホをいじっている人が散見されたのはそういうことか。

双六小屋の北側には鷲羽岳がよく見えた。夕方来てみると、全体的にガスっている中で下の方に雲が見えた。下が平野なら雲海になったのだろう。

鷲羽岳
夕方

この日の夕食はご飯と麻婆春雨だった。麻婆春雨は実質既製品なので良いとして、山でご飯を炊くのは難しい。しかし、妻の炊いたご飯はよく炊けていた。

4日目 下山

朝の3時ごろ起きると雨と風が強かった。これだけの風雨から守ってくれるからテントとは偉大なものだ。

ただ、テントの前室に置いていた登山靴が一部はみ出ていたらしく、妻の登山靴が濡れるどころか水が溜まっていた。気づかなくて申し訳なかった。

登山靴のことは置いておくとしても、この悪天候の中で行動するのは辛い。せめて雨と風のどちらかだけでも収まってくれたら良いのだが。

予定では5時ごろに出るつもりで撤収したかったが、しばらく様子を見ることにした。日の出が近づくと風雨が弱まるかもしれない。

果たして、5時ごろになると雨が収まった。チャンスと思ってテントを撤収する。風は強いままなので、飛ばされないようにフライの風上側の紐は張ったままにして、最後に片付けた。

テントを撤収するのは我々がほぼ最初だったようだが、小屋泊まりの人は既にちらほら出て来ていた。

5時43分に出発。予定より遅くなったとはいえ、順調に下山できれば温泉に入ってお昼ご飯を食べて13時40分のバスに乗れる。温泉。それは希望だ。

双六小屋からは若干登る。昨日の登りが最後ではなかったのか!?妻はもう1メートルも登りたくないと言う。

くろゆりベンチや花見平を過ぎ、弓折岳分岐で休む。今回の稜線歩きはここまでだが、感慨に耽る余裕はなかった。

くろゆりベンチ
花見平
弓折岳分岐

居合わせた登山者が話しているのが聞こえた。曰く、雲ノ平から太郎平を経て折立に降りる予定だったが、太郎平小屋の休業で急遽新穂高温泉に降りることにしたのだとか。交通情報を調べてなくて不安だったようだが、別の登山者に教えてもらえていたので我々が口を出す余地はなかった。

ここからはひたすら下りである。晴れていれば下り斜面の途中に鏡平が見えたのかもしれないが、今回は悪天のため全く見えなかった。

30分ほど降った7時22分、鏡平が唐突に現れた。鏡平にはいくつか池があり、晴れていれば槍ヶ岳が映るらしいが、この天気では望むべくもなかった。

鏡平山荘

鏡平山荘ではかき氷が販売されているらしい。暑い日には嬉しいのかもしれないが、この天気では食べる気分にはならない。

売店

面白いのは、自販機が設置されているということだ。ポカリが500円で売られていた。さらに、商品列の右下には1000円札を100円玉に替えてくれる「両替」という商品が売られていた。

自販機

さらに降っていく。途中、「熊のおどり場」を通過した。8時ごろ、ベンチのある場所に到着。ここが「シシウドヶ原」か?とにかく休む。巨石の上には小さな石が積まれていた。

熊のおどり場
シシウドヶ原?

休んでいる間に大学生くらいのパーティーが登ってきた。この天気の中で登るとは殊勝なことだ。ただ無理はしないでほしい。

そこからは上涸れ沢、イタドリヶ原、下涸れ沢、チボ岩などを通過。

上涸れ沢
イタドリヶ原
下涸れ沢
チボ岩

視界はなくとも、沢が近いと水音でわかる。9時過ぎに秩父小沢を通過し、9時11分に秩父沢で休憩。ここらで一時的に雨が弱まったかと思って雨具を脱いでみたが、結局また降ってきた。

秩父小沢
秩父沢
秩父沢

だいぶ標高は下がってきたが、まだ気は抜けない。林道に出るまで一歩一歩着実に進む。

林道が近い

そして、再び水音が近づいてきた。今度は谷底を流れる水音だ。しばらく河岸を歩き、ついに林道に辿り着いた。小池新道の終点だ。

川のそばを歩く
小池新道終点

そこで休んでもよかったが、20分ほど歩けばわさび平小屋なのでもう一踏ん張りする。林道は深いことを考えなくても足を前に出せば踏み場があるので良い。

林道歩き

時折、缶と棒が置いてある。熊対策のために鳴らせということらしい。一応熊鈴は持っていたが、出すのが面倒なので缶を鳴らさせてもらった。

熊対策

10時半、わさび平小屋に到着。わさび平小屋ではトマトやきゅうりなどの生野菜が売られている。料理としてはそうめんを出しているのが特徴のようだ。わさび平小屋は林道のゲートの奥に位置するとはいえ、許可を得れば車で乗り入れることができるのだろう。実質下界と言っても過言ではないかもしれない。

わさび平小屋
トマト
メニュー

雨具を今度こそ脱ぐ。雨が降ってきたら傘を使えば良い。あとはひたすら林道を歩くだけだ。

わさび平小屋には30分ほど滞在し、1時間ほどの林道歩きを経て、新穂高温泉に降り立った。12時、下山。

林道の橋
ゲート
ロープウェイ駅が見えてきた

下山後

目標のバスは13時40分発である。駅でバスの切符を買った後に中崎山荘奥飛騨の湯へ向かう。中崎山荘は登山客のザック置き場もちゃんと設置されているので安心だ。「濡れた靴下は玄関で脱いでください」という、まさに我々のための案内もあった。

中崎山荘

温泉にじっくり浸かりたいのはやまやまだが、食事の時間も必要だ。温泉には30分ちょっと入り、その後で食事をとった。我々はカレー(とジュース)を注文したが、他の客の動向を見ると高山ラーメンが人気のようだった。

あとは帰るだけだ。新穂高温泉駅13時40分発のバスに乗る。途中の平湯温泉で新宿直通のバス(要予約)に乗り換えられるようだったが、計画段階ではそこまで気づかなかった。

新穂高温泉に降りるのは3回目だが、安房峠道路を通って松本側に抜けるのは筆者は初めてだった。安房トンネルは末端部(長野県側)が急なカーブになっていた。その後、梓川沿いのトンネルが交互通行のような状態になっていて時間がかかった。

バスは松本駅前のバスターミナルに到着した。ここからは特急あずさでサクッと帰ろう(松本からの高速バスは減便しており使いづらいと判断した)。最近のJR東日本はスマホでチケットレス特急券を買うと100円ほど割引になるので、筆者は券売機ではなくスマホをポチポチした。ザックを置くことを考えると車両の最後部の座席を取りたかったが、どうやら売り切れのようだった。仕方ない。

列車内で食べる軽食を買って、あずさに乗り込む。さすが夏山シーズンの松本駅、登山姿の人が目立つ。

乗った車両は後ろの方に大型荷物置き場が設置されているタイプだった。筆者には北陸新幹線でお馴染みだったが、在来線特急にもあったのか。だが登山客の数には足らなさそうだ。

仕方なく足元に荷物を置こうとしていると、向かいの席の登山客に声をかけられた。曰く、荷物置き場にザックを置いたのだが、自分は八王子で降りるから、その手前か奥に置きなさい、と。我々は新宿まで乗るので、筆者のザックを彼のザックの奥に置かせてもらうことにした。妻のザックは座席の上の荷物棚に置いた。

中央本線に乗るのは久しぶりだ。中央本線と大糸線には山の思い出が詰まっている。北アルプス、南アルプス、八ヶ岳、その他山梨県の山々……。今は亡きムーンライト信州も3回ほど使った。

中央本線からは南アルプスや八ヶ岳がよく見える。我々は右側(南側)の座席を取ったので南アルプスが見えるかと期待したが、残念ながら曇りで全く見えなかった。

勝沼ぶどう郷あたりでアナウンスが流れた。右手に甲府盆地が見下ろせますとかなんとか。

快適な特急列車旅の末、我々は新宿駅・中央本線特急ホームに降り立ち、帰宅した。


雨に濡れたのは残念だったが、久しぶりにボリュームのある登山だった。食事周りの準備をしてくれた妻には感謝している。


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