やめるのだフェネックで学ぶネットミームの発生と変化

ここ数日、「フェネックやめるのだ」というネタが自分のTLで流行しており、色々と思うところがあるので、まとめておく次第である。以下の記述には、筆者の事実誤認や見落としがあるかもしれないが、筆者は知恵の象徴とかそういうのではないので容赦して欲しい。

0. 背景

まず、アニメ「けものフレンズ」における、アライさん(アライグマ)とフェネックの関係を振り返っておく。

アライさんとフェネックは、作中で主人公一行を追跡する2人組である。とある理由で主人公を追跡しているアライさんに対し、フェネックが「アライさんに付き合うよ」(1話)と言って、行動を共にするのである。

アライさんは割と周りを見ずに突っ走るのに対し、フェネックは比較的冷静である。アライさんの発言も鵜呑みにしているわけではないことが、8話Cパートの会話からうかがえる:

アライさん「あんな巨悪を許しては、パークの危機なのだ!」
ハシビロコウ「勘違いじゃ…?」
フェネック「多分勘違いなんだけどね〜〜」
アライさん「フェネックまでー!」

1. 発生

アライさんとフェネックであるが、濃い関係性を持った2人の女の子なので、当然、二次創作では百合とかレズとかそういう方向性に発展する。

作中ではフェネックの側が何の見返りもなくアライさんについていく構図なので、フェネックの側がアライさんに対して積極的ということになる。

そういうわけで、フェネックがアライさんに迫るシチュエーションも当然妄想創作され、その時に(ノンケ?な)アライさんは「フェネック、やめるのだ!」と言うわけである。

「フェネックやめるのだ!」はやらかすフェネックをアライさんが止めるネタでなく、フェネ×アライのレズネタだった – Togetterまとめ

2. 拡散

そういう「フェネックガチレズ」文脈で、「フェネックやめるのだ」診断を作った人がいた。(診断が作られたのは3月29日の夜のようである)

フェネックやめるのだ – 診断メーカー

妄想力に秀でた諸兄がこの診断結果を見れば、フェネアラがベッドの上でどったんばったん大騒ぎしている様が眼に浮かぶであろう。

この診断が、ツイッターで流行した。

3. 変容と問題点

診断が流行した結果、「フェネック、やめるのだ!」を組み込んだツイートが大量生産されることとなる。

特に、4月6日ごろから「#やめるのだフェネックで学ぶ〇〇シリーズ」というハッシュタグ群が発生した。

やめるのだフェネックで学ぶシリーズに関連する32件のまとめ – Togetterまとめ

また、Twitterのbotも3月29日に登場した。

フェネックやめるのだbot(@yamerunoda)さん | Twitter

このbotの、確認できる最初のツイートは以下↓

さて、この構文は、ベッドの上という文脈の外でも使われることとなった。すると多くの場合、何か愚かなことをやらかそうとしているフェネックをアライさんが咎める構図となる(※)。これは、元々の2人のキャラクターとはかけ離れた(むしろ真逆に近い)構図である。

※これに該当しないシチュエーションとしては、フェネックのイタズラをアライさんが止めようとするものが該当する。

フェネックやめるのだ!ネタツイまとめ – Togetterまとめ

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4. 問題点の解消の試み

構文の適用によって生じるキャラ逆転の問題を解消するために、アライさんの台詞に「なんで()めるのだ!」を加えたものが現れた。これにより、愚かなことをやらかそうとするアライさんを止めようとするフェネックという、元々のキャラ付けに沿った構図となる。

しかし、この解決策には2つの問題があると筆者は思う:

まず、「やめる」と「()める」が同じ台詞の中に混在することになるが、「止める」は「やめる」とも読むことができるため、ぱっと見であまり読みやすいものではない(「やめるのだフェネック!なんでやめるのだ!」と読めてしまう)。

また、アライさんの行動を「()める」のを「やめる」ように言うわけで、言い回しが回りくどくなる。


雑感

アニメ等において、本編にない言い回しが流行すること自体はよくあることである。比較的マイナーなコンテンツであれば、元々のキャラ付けと正反対な状況の言い回しが流行することもあるかもしれない。しかし、そのようなことが「けものフレンズ」のような大ヒットしたコンテンツでも起こるということが、筆者には意外であった。

筆者はこの構文を積極的に使おうとは思わないが、それでも、このようなネットミームの発生と変容は興味深いので、不得手ではあるがブログ記事としてまとめてみた次第である。

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