久しぶりにLunarMLの話題です。LunarMLは、私が作っているStandard MLコンパイラーです。
最近は、JavaScriptとの連携に関する機能を追加しています。Webで使えるようにするのと、Promise/async/await周りの統合をいい感じにすることを目標にしています。
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定理証明支援系 (proof assistant / interactive theorem prover) というのは、専用の言語で書いた証明を機械にチェックさせるツール、およびその証明の記述を支援するツールです。Rocq(旧名Coq)、Agda、Lean、Isabelleなどが有名です。
この記事では、定理証明支援系について私が感じている問題意識を説明します。私自身は定理証明支援系のヘビーユーザーではないので、もっと勉強したり、定理証明支援系を使い込んだりすれば答えが見つかるのかもしれません。詳しい方からのフィードバックを頂けると嬉しいです。
続きを読むプログラミングをやっていると、「関数に副作用がある」とか「副作用がない」あるいは「純粋である」という話をちょいちょい耳にする。そして、「外界の状態を読み取るけど変更はしない関数」、例えば
function getTime() {
return Date.now();
}
のような関数に副作用があるか?みたいな議論が始まったりする。
くだらない議論だ。
何か概念を定義するときは、それが「役に立つ」場面を提示できる必要がある。「関数の副作用」を定義するときは、「関数の副作用」がわかったときに何をしたいのかをはっきりさせる必要がある。「関数のどういう側面に注目したいか」を決めずに「副作用の有無」を論じるのはナンセンスだ。
ここでは、言語処理系(コンパイラー)を実装する者の立場で、関数の副作用について論じてみたい。
続きを読むIntelはコンピューターの頭脳、CPUを作っている会社です。CPUで動作するプログラムを書くためには、プログラムを低レベルな命令の列に変換し、その命令の列を特定の規則に従って変換したバイナリー(機械語)を用意しなければなりません。IntelのCPUが提供する命令や機械語について、Intelが用意しているマニュアルがIntel 64 and IA-32 Architectures Software Developer’s Manual、略してIntel SDMです。
Intel SDMの最新版は「Intel® 64 and IA-32 Architectures Software Developer Manuals」から入手できます。全部合わせて5000ページ以上あります。
Intel SDMも人間が書いているマニュアルなので、時々誤植等があります。容易にそれとわかる誤植なら可愛いものですが、時にはわかりにくいものもあります。
December 2024の版における、CVTSS2SI命令の説明を見てみましょう。これは単精度浮動小数点数(Scalar Single-precision)を符号付き整数(Signed Integer)に変換する命令です。
続きを読むブログ等にちょいちょい書いていますが、私はこの数ヶ月ほどGHCのSIMDサポートの改善を進めています。
この3ヶ月間はx86 NCGで整数のSIMD演算を使えるようにするパッチを書いており、数日前にマージされました。一つのマイルストーンだと思うので記事にしておきます。
続きを読む最近、某所で「数学とプログラムはどちらが易しいか」という話題が出ました。その場ではあまり上手い返しができなかったので、ブログ記事の題材にして供養します。
もちろん、この質問の答えは人によって違うでしょうし、人によって違うからこそ質問として意味があると言えるでしょう。この記事に書くのは私の見方、私の意見です。
短い答えが欲しい人向けに2択で答えておくと「私にとってはプログラムの方が易しい」となりますが、以下に長い答えを書きます。
続きを読むTypeScriptにはneverという型があります。先日も記事にしましたが、簡単に言うとこれは「値を持たない型」です。
never型は、あらゆる型に対してその部分型として振る舞います。例えば、never が number の部分型であることは次のコードでわかります:
TypeScriptをはじめとするいくつかのプログラミング言語には、never型という型がある。この型は典型的には「制御を返さない関数」の返り値として使われる:
function f(x: string): never {
console.error(x);
throw new Error();
}
never型は型システム的には「値を持たない型」「任意の型の部分型」として特徴づけられる。
他のプログラミング言語、例えば私が作っているLunarMLにもnever型があると便利だろうか?
続きを読むプログラミング言語のインタプリタの説明で「逐次機械語に翻訳する」という説明を見かけることがある。ググればそういう説明がたくさん出てくるので具体例は割愛する。
しかし、「機械語に翻訳する」という説明は好意的に言えば「誤解を招く言い方」で、率直に言うと「デタラメ」である。
そういう説明を書く人は、自分でインタプリタを書いたことがあるのだろうか?誰かが書いた間違った説明文をそのまま引き写しているのだろうか?
もちろん、世の中にはJITコンパイルする言語処理系もあるが、それはインタプリタのように使えたとしても「コンパイラ」なのではないか。
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