プログラムにとって入出力は大事です。入出力機構がないと、計算の入力を受け取ることも、出力を出すこともできません。
Standard MLにも当然入出力に使う型と関数が定められています。例えば、print
関数は標準出力に文字列を出力し、flushします。TextIO
や BinIO
などのモジュールを使うと、ファイルの読み書きを行うこともできます。
LunarMLも、これらのモジュールを一部実装しています。しかし、今の実装はやっつけなので、もっとしっかりした(準拠度の高い)実装にしたいです。
Standard MLの入出力
Standard MLの入出力はいくつかのレイヤーに分かれています。
一番高いレイヤーが「手続き的入出力」すなわち IMPERATIVE_IO
や TEXT_IO
や BinIO
です。これらは
- 手続き的な入力
- 手続き的な出力
- ストリームのリダイレクト
などの機能を提供します。
手続き的入出力は、ストリーム入出力のラッパーと思えます。手続き的入出力のストリームの型はストリーム入出力の型を使うと
type instream = StreamIO.instream ref
type outstream = StreamIO.outstream ref
という風に理解できるでしょう。
ストリーム入出力は STREAM_IO
で表されます。機能的には、
- 関数的な(遅延リスト的な)入力
- 手続き的な出力
- バッファリング
を提供します。「関数的な入力」というのは、例えば「一文字読み取る」関数が
val input1 : instream -> (elem * instream) option
という型を持ち、「入力に与えられたストリーム」とは別の「一文字読み取った後のストリーム」を返すということです。同じストリームに input1
を複数回適用すると同じ結果が得られることが期待されます。
ストリーム入出力の下にあるのがプリミティブ入出力です。プリミティブ入出力 PRIM_IO
は、システムコールを抽象化したものだと思えます。機能的には、
- バッファリングなしの、手続的な入出力
- ノンブロッキングIO(オプション)
- ランダムアクセス(オプション)
- OSのファイル記述子へのアクセス(オプション)
- ファイル記述子に対しては、等価性比較、ハッシュ値の取得、大小比較ができることが想定されています。
があります。ただし、プリミティブ入出力はあくまでインターフェースを定めるものであり、特定のシステムコールに紐づいたものではありません。特定のシステムコールを呼び出すプリミティブ入出力の実装を提供するのは openIn
とか stdIn
とかを提供する側の役目です。
Standard MLにはこのほかに、OSのシステムコールに対応する型と関数が規定されています。
LunarMLの入出力
LunarMLは、スクリプト言語の提供する入出力機能をラップしてStandard MLの型と関数として見せたいです。スクリプト言語の提供する入出力機能とは、Luaで言えば io
モジュール、Node.jsで言えば Readable
/Writable
などのストリームです。
スクリプト言語の提供する入出力機能をシステムコールとみなしてプリミティブ入出力として提供できれば良かったのですが、現実にはそううまくはいきません。スクリプト言語の提供する入出力機能にはバッファリングがあるのに対して、プリミティブ入出力にはバッファリングはありません。具体的には出力ストリームのflush操作がプリミティブ入出力にはないのです。書き込み操作の度にflushすればエミュレートできるかもしれませんが、ストリーム入出力のレイヤーでバッファリングを再実装するのかという問題もあります。
今考えているプランは、ストリーム入出力を単なるプリミティブ入出力のラッパーとするのではなく、内部実装として「プリミティブ入出力、あるいはスクリプト言語の提供する(バッファリングされた)ストリーム」の2択を持てるようにする案です。ストリームからプリミティブ入出力のインターフェースを得る場合は、ファイル記述子っぽいものを含めて、逆の操作(ストリーム入出力の構築)を行うときに「スクリプト言語の提供するストリーム」を復元できるようにします。ファイル記述子としては、スクリプト言語の提供するストリームと独自に割り当てる整数をハッシュテーブルで対応させて管理することにします。
まあ、言葉にするのは簡単ですが(これでも結構考えたのですが)、実装するのは面倒くさいです。少しずつやっていきます。