私が2020年に買ったMac mini (Apple M1) は内蔵ストレージが512GBのものを選択してしまったせいで、苦労した。普段使いには最低1TBは必要だった。
そういうわけで、M1 Mac miniには「Mac mini向け・SSDエンクロージャーとUSBハブとSDカードリーダーが一体になったやつ」を買って、外付けSSDをつけていた。この時は、発熱を心配して、2.5インチSATA接続の1TB SSDを使った。
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私が2020年に買ったMac mini (Apple M1) は内蔵ストレージが512GBのものを選択してしまったせいで、苦労した。普段使いには最低1TBは必要だった。
そういうわけで、M1 Mac miniには「Mac mini向け・SSDエンクロージャーとUSBハブとSDカードリーダーが一体になったやつ」を買って、外付けSSDをつけていた。この時は、発熱を心配して、2.5インチSATA接続の1TB SSDを使った。
続きを読む家に複数のPCがあって共有フォルダーみたいなものを用意したい場合、あるいはPCのストレージが狭くなって外付けのストレージが欲しいがノートパソコンにSSD等をぶら下げると邪魔な場合は、ネットワーク越しにアクセスできるストレージ、NAS(Network Attached Storage)があると便利だ。私も10年前にQNAPというメーカーのNASを導入した。
しかし、この時買ったTS-212Pはいくつかの観点で見劣りするようになってきた。具体的には以下だ:
そこで、「新しいNASを買いたい」とここ数年考えていた。同じQNAP製のNASであればHDDを差し替えるだけで利用できるので、QNAP製のものにしたい。
先日のAmazonのブラックフライデーセールで、狙っていたTS-264 [Amazon] が安くなっていたので(7万円くらい)、買った。本当はワンランク下のTS-262でも良かったのだが、販売終了感が出ていたので。
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先月の記事に書いたように、10月にML Family Workshopで発表するためにシンガポールに行きました。
この記事は、現地でしたこと、感じたことなどをまとめます。
文中の「ドル」は「シンガポールドル(SGD)」のことで、滞在当時は1ドル122円程度で両替できました。
続きを読む先日、「新しくプログラミング言語を作る際に文字列型をどうするべきか」という記事に私の文字列型についての持論を書きました。
この記事では、私が作っているLunarMLというStandard ML処理系で文字列をどう扱っているか(あるいは、どう扱う予定であるか)を紹介します。
続きを読む特定の技術について関心を持った人が集まって交流する会が開かれることがあります。関数型言語で言うと、今年の6月に「関数型まつり」という国内イベントが開かれました。もっとStandard MLにフォーカスした集まり、あるいは、国際的な集まりとなると、ML Family Workshopがあります。
ML Family Workshopは、関数型プログラミングに関する国際会議であるICFP (International Conference on Functional Programming) に付属して開催されるワークショップで、その名の通りStandard MLに限らず、ML系と呼ばれるプログラミング言語群(OCaml, F#等)も対象としています。きっちりした査読等はなく、比較的ゆるい感じのようです。
ICFPは今回はSPLASH (International Conference on Systems, Programming, Languages and Applications: Software for Humanity) という会議と合同で開催され、全体では1週間ほどあります。ML Family Workshopは10月16日の1日の開催で、私もその日だけの参加としました。
(OCamlについてはOCaml Users and Developers Workshopというイベントもあり、これもICFPと併設です。日付が重ならないように(隣になるように)配慮されているほか、(おそらくOCamlの方が人気なので)OCamlの枠に収まらなかった発表がML Familyの方に回されることもあるようです。)
LunarMLの開発を何年も続けていて、スター数もそこそこあるので目に留まりやすくなったのか、今年の前半に「今年のML Family Workshopで発表しないか」というお誘いをいただきました。ICFPは毎回開催場所が異なり、今年は10月にシンガポールでの開催でした。
続きを読む9月に子供が生まれました。出産に立ち会いましたが、妻にとっては文字通り命懸けで、感謝してもしきれません。父親として、妻と共に子育てを頑張っていきます。
今は育休をとって二人で世話をしています。職場では私はそれなりに重要なポジションなので、休むと他の人が頑張らないといけません。復帰した後は、迷惑をかけた分を挽回できるように頑張りたいところです。
それにしても、自分の子供というものは思った以上に可愛いものです。見ていて飽きません。穏やかに寝ていたら「寝る子は育つ!えらい!」、泣いていたら「赤ちゃんは泣くのが仕事!えらい!」、手足をバタバタ動かしていたら「筋トレだ!えらい!」、排泄をしたら「生命活動の証!えらい!」という具合です。親バカでしょうか。
この子がどんな大人に育つのか、その時の社会はどうなっているのか、わからないことだらけですが、少しでも良い未来になるようにできることをしたいです。
子供が生まれたことが象徴的ですが、自分の人生が「後進を育成する」段階に移りつつあることを感じます。もちろん、子供を育てていくには稼がないといけないので、自分自身もまだまだ挑戦を続けていく必要がありますが。
職場は若い人が多く、上司からは、彼らに私の技術を伝達することを期待されています。私が趣味の時間も注ぎ込んで獲得した技術をどうやって伝達すればいいのかはいまいちよくわかりませんが、なんとかやっていく必要があります。
また別の話ですが、趣味で貢献しているOSSプロジェクト(GHC)で、自分でやろうと思っていたタスクが経験の浅い人にアサインされた、ということがありました。自分でやればすぐ終わるのに、とは思いましたが、いいんです。新しい人に経験を積ませて戦力として育てればプロジェクトにとって長い目で見て得だろう、ということは私にもわかりますから。GHCに関して言うと、私はGHCにSIMDを実装することに取り組んでいますが、簡単なタスクはnewcomerのタグをつけて他の人に任せる、という手段も取っていくべきでしょう。
私としては、他の人に教えるということは性に合っていると思います。大学時代にやっていたサークルでは下の代に引き継ぎをする機会もありましたが、資料はそれなりに気合を入れて作っていた気がします。あるいは、大学院時代のTAもそれなりに頑張っていた気がします。普段書いている技術記事も、特定の読者を想定しているわけではありませんが、自分の知見を共有する行為です。
私は音声よりも文字媒体の方が得意です。会社での教育も資料を作るという形でやるべきなのでしょうか。それともペアプロ等を試すべきなのでしょうか。模索していきたいです。
プログラミング言語の表層構文を見ていると、「自然言語(特に英語)に寄せたかったのかな」と思わされる語順を時々見かけます。例えば、Pythonの from somemod import a, b という語順は英語として自然に読めることを意識していると思われます。
こういう設計の背後には「自然言語のように読める構文が良い構文だ」という暗黙の仮定があるように思えます。しかし、それは正しいのでしょうか?
この記事では、いくつかの例を元に、プログラミング言語の構文の「合理性」はどのような基準で測られるべきなのかを考えます。筆者の主観(感覚)に基づく基準もあり、普遍的な基準を作成することを目指しているわけではありません。「それはお前がそう思っているだけなのでは?」と思われる部分もあるかもしれません。仮説、あるいは議論の材料の提示と思っていただくのが良いかもしれません。
続きを読む私が作っているStandard MLコンパイラー、LunarMLの近況報告記事です。LunarMLに関する直近の記事は
でした。
GitHubスター数が400に到達しました。ありがとうございます(執筆時点では402に増えています)。まだスターをつけていない方は https://github.com/minoki/LunarML でスターをつけることができます。

スターが350に到達したのは2024年10月、300に到達したのは2024年5月のことだったようです。
(本プロジェクト限定というわけではありませんが)GitHub Sponsorsにも触れておくと、現在は @toyboot4e さんと @kevin-kmetz さんにスポンサーしていただいています。ありがとうございます。
https://github.com/sponsors/minoki
JavaScript連携の記事で、
JavaScriptの
PromiseのthenはコールバックがPromise(正確にはThenable)を返したら更にそれを待ち受ける挙動をします。モナドのbindみたいな感じです。この仕様があると('a promise) promiseみたいな型をいい感じに扱えないので、Standard MLの世界のコードがPromiseの中身としてPromiseを返そうとした場合はラッパーを噛ませるようにします。
と書きました。「Promise の中身として Promise (より正確には Thenable)を返そうとした場合はラッパーを噛ませる」の部分をコードで説明すると、次のような関数 wrapThenable, unwrapThenable の呼び出しを適宜噛ませる形になります:
function ThenableWrapper(x) {
this.payload = x;
}
function wrapThenable(x) {
if (typeof x === "object" && typeof x.then !== "undefined") {
return new ThenableWrapper(x);
} else {
return x;
}
}
function unwrapThenable(x) {
if (x instanceof ThenableWrapper) {
return x.payload;
} else {
return x;
}
}
JavaScriptの通常の Promise との相互運用を可能にするため、値が Thenable ではない場合は元の値を活用します。
しかし、Promise の操作をするたびに必ず wrapThenable の呼び出しを挟むというのはダサいです。値の型が string や int など、明らかに Thenable ではないことがわかっている場合は、呼び出しを省略したいです。そのためには、最適化が進んだ段階でもコードの型情報を保持しておくことが必要です(インライン化によって型が判明する状況を考慮する)。現状のLunarMLでは最適化はCPS中間言語に対して行っているので、CPS中間言語を型付きにすることが必要です。
型情報の別の用例を挙げます。次のコードを考えます:
(* val foo : unit -> unit
val bar : unit -> string *)
val x : unit = foo ()
val _ = bar x
x は unit 型の変数で、情報を保持していません。こんなコードを書く人はいないと思われるかもしれませんが、最適化の結果としてこういうコードが現れることは十分にあり得ます。
この場合、ソース中の x という変数を出力コードに反映させるのは無駄です。特に、Luaではローカル変数は貴重な資源なので、節約したいです。そこで、「型が unit の変数の使用は値 () で置き換える」という変換が考えられます。
そんな感じで、中間言語、特にCPS中間言語に型がついていると便利そうです。
LunarMLの中間言語は
という流れになっています。
従来は、System Fωライクな中間言語までは型がついていて、CPS中間言語には型がないという状況でした。3月ごろに、System Fωライクな中間言語の型検査器を実装しました。
今回、CPS中間言語を型付きにして、型検査器も実装しました。
型付きのCPS変換はしっくりくる先行研究が少なくて、なかなか難航しました。LunarMLの型付きCPSメモにいくつかメモりましたが。
最終的には、「型抽象と型適用は、通常の関数と関数適用と同様に扱う(ただしフラグをつけて区別できるようにする)」「最適化をある程度かけた段階で、多相型を消去する。完全に型を消去するのではなく、漸進的型付けのAnyのような感じで置き換える。その後再び最適化をかける」という形にしました。
最初は中間言語に対する型検査器はなくても良いかなと思っていましたが、型に関するバグがあったときに型検査器がないとエスパーでデバッグする羽目になり、しんどかったです。なので、結局型検査器を実装しました。実装したらしたで無限にバグが見つかってしんどいことになりましたが。
型周りのバグの発見には、過去に書いたテストが役に立ちました。テストは資産です。
悪いニュースとして、CPS中間言語に型をつけたことで、コンパイルが遅くなったり、メモリ使用量が増大したりしています。中間言語の型検査をやめれば時間の増加は軽減されると思いますが、テスト時はしっかり検査したいので、テストの所要時間は減らせなさそうです。
今年のICFPはシンガポールでの開催で、それと併設で10月16日にML Family Workshopというのが開催されます。学会誌なんかは出ない、インフォーマルな集まりのようです。
このML Family WorkshopにLunarMLの話を応募したところ、通りました。というわけで、行ってきます。
このところLunarMLの作業を頑張っているのは、ML Family Workshopで話せる内容を少しでも増やしたいという気持ちからです。ですがCPS中間言語の型付けに時間を使いすぎた感があるので、そろそろ資料作成と発表練習をしないといけません。
ML Family Workshopの前になるか後になるかは不明ですが、そろそろ新しいバージョンとしてリリースしても良いかもしれないと思っています。ユーザー視点ではJavaScript周り(Promise連携とか)が新機能になるかと思います。GitHub Actionsでビルドする仕組みを整えたので、MLtonでビルドしたバイナリーも配布できると思います。
可算選択公理を仮定しない構成的数学では、Cauchy列に基づいた実数の構成をやるときに完備性が示せなくなる(らしい)。この弱点は、実数の構成に使うCauchy列を有理数の点列ではなく、有理数の集合の列とすれば克服できる。
このことは「Handbook of Constructive Mathematics」のFred Richmanの記事で示唆されているが、あまり詳しい取扱いはなかったので自分でやってみた。と言っても、地味な命題の証明は省略しているが……。
https://miz-ar.info/math/real-construction-without-choice-20250816.pdf
Mathlogにも書いてみた。